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仲山氏:「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」が公式のコミュニケーションなのに対して、倉貫さんが大事にしている「ザッソウ(雑談・相談)」は非公式なコミュニケーションの色合いが濃いですよね。

 チームビルディング的には、本音を言い合える「心理的安全性」が大事だと言われますが、その醸成にはまさにザッソウの果たす役割が大きいです。

 その点、これまでの働き方がたまたま「同じ場所に集まる」という方法だったからザッソウが生まれやすかったけれど、言い換えると「公式コミュニケーションだけでは回らない組織文化になってしまっている」というところにリモートワークがうまくいかない本当の原因があると思うのです。

倉貫氏:改めて考えてみると、これまではなんて牧歌的な時代だったんだろうと驚きますね。チームビルディングを「同じ場所に集まる」という偶発的なものだけに頼って、ほとんど何もやらずにさぼってきたのかと、自分の反省も含めて思います。

(写真:守谷美峰)

仲山氏:リモートで離れた途端にぎこちなくなったとしたら、それはもともとのコミュニケーション設計が原因かもしれないんです。リモートでもうまくいく工夫をすることなく、因果関係をごっちゃにして「やっぱりリモートはやめる」となるのは残念すぎます。

 後々、「リモートは昔やったけど駄目だったんだよね。やっぱり人ってのは顔を合わせてなんぼでしょ」という人が、変化を止め続けることにもなりかねません。

倉貫氏:リモートワークでうまくいく組織は、オフィスで働いても絶対に生産性が上がる組織になると、僕は確信しています。仕事の進め方やチームのあり方を見直す絶好の機会として、リモートワークへの切り替えを生かしていくほうが、絶対に得策です。

成功体験を積む前に管理しようとしてはいけない

仲山氏:今後起こり得る残念なパターンとしては、会社が「リモートワーク導入のための制度を作ります」と言い出して、問題が起こらないようにとガチガチのルールを決めてしまうことです。

 リモートワークの成功体験がない段階では、「問題が起こる可能性があるのでこれはやっちゃ駄目」と必要以上のディフェンスラインを敷いたり、「必ずこうすべし」という指示命令型のルールをつくったりしてしまいがちです。

 その結果どうなるかというと、「そんなの無理だ」と反発したり、「言われた通りにやっているのにうまくいかない」と誰かに責任を押しつけたりする社員が出てきます。しかし、ルールで縛るのではなく、「こういう選択肢があるよ」と提案すると、「じゃあ、自分はこうしてみようかな」となる。

 そもそも管理というのは、「うまくいったことを分析した結果、こういうルールにすれば再現性が高まることが分かった」ということで実施するものです。

 まずは少人数のグループに分かれて一斉に試行錯誤し、どこかのグループが成果を出すまで続けることを最優先にしたほうが、うまくいきやすいです。

篠田氏:結構、時間はかかるものですよね? その期間を乗り切れるかが重要な気がします。

仲山氏:いいチームになるまでに、どういうステップを踏んでいくのかを全員で共有しておくことが大事です。チームの成長プロセスとして、僕がいつも説明しているのはこれ。フォーミング(同調期)→ストーミング(混沌期)→ノーミング(調和期)→トランスフォーミング(変態期)の4ステージです。この曲線はパフォーマンスの変化を示しています。混沌期の谷を乗り越えると劇的にパフォーマンスが上がるのは、まさに倉貫さんの自転車理論と同じ意味合いを示しています。

 リモートワーク導入に伴うプロセスを当てはめるとしたら、まず「めっちゃ集中できてはかどるわ」「オフィスの賃料いらないかも」などと気分上々なのが最初のフォーミングのステージ。その後、「どうやったらうまくできるか」とみんなで試行錯誤と話し合いを始めると、一時的にパフォーマンスは下がります。

 そのうち「こうやったらうまくいった!」という小さな成功体験が生まれ、それをみんなでブラッシュアップしていくと、格段にパフォーマンスが伸びるステージに入っていきます。そこまで諦めずに待てるかどうかが大事です。この4つのステージは「地図」のようなものなので、メンバーみんなで共有して、「今どのへんかな?」「そろそろストーミングだね」「もうすぐ谷を越えられそう」などと話し合える環境をつくれると、スムーズに進みやすくなります。

「いつか元の働き方に戻す」という前提は捨てよう

倉貫氏:僕は「できるまでやり切る」くらいの気概を持つべきだと思います。これほど強く言い切れるのは、僕自身が実際にフルリモート改革をやってみて、圧倒的に会社の生産性が高まったという自信があるからです。

 今は世の中の情勢を見ながら、「とりあえず原則在宅勤務」という感じでいったん振り切った会社が多いと思うのですが、「いつまで続けようか」と“元の働き方に戻す”前提は捨てたほうがいいと思います。