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“6メートル以内のチーム感”をどう再現するか

篠田氏:以前読んだ『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』(ダニエル・コイル著、楠木建監訳、かんき出版)という本で紹介されていた「6メートル」の話と通じる気がします。

 それは「職場環境の中で、相手と心理的に安全なチームであることを感じられる条件は何か」を研究した事例なのですが、結論から言うと、それは会話の量でもなく、ランチを共にする頻度でもなく、“物理的な距離”だったそうなんです。日常的に6メートル以内の距離で接している人に対して「この人と一緒にいても安全だ」という意識を持つのだと。逆に言うと、6メートル以上離れて過ごす相手に対してはそのような意識が働かなくなるから、隣のビルにいるのと同じことです。

仲山氏:この“6メートル以内の関係性”をリモートで再現したのが倉貫さんの実践ですよね。

 「6メートル以上離れるとチーム意識を持てない」という結論を文字通り解釈すると、「だったら、リモートは駄目だ」と受け取りがちですが、大事なのは“6メートル以内の意味”を丁寧に考えてみることですよね。

 それは例えば、近くで数人が小声で話しているのがなんとなく耳に入ってくる距離感であったり、お互いの顔を見ようと思えばいつでも見られて「あ、ちょっと機嫌悪そうだから、話しかけるのは後にしよう」と間合いを計れたりすることでしょう。

倉貫氏:それを仮想空間で再現するチャレンジをやってみた、ということです。

篠田氏:一方で、これほどの先進事例にはとても追い付いていない企業が大半なのが現状ですよね。「ようやくオンラインミーティングを始めたばかりです」といったビギナーに向けて、「例えば、こんな方法を試してみては」という提案はありますか? 

倉貫氏:1つ、実験されるといいかなと思うのは、6人くらいまでのチームでオンラインミーティングを“1日つなぎっぱなし”にしてみることです。実際、そうしている企業を何社か知っていますが、音声をミュートにしておき、誰かに話しかけたいときだけミュートオフにすると「6メートルの距離感」は再現しやすいのではないかと思いますよ。

仲山氏:倉貫さんの会社でもそうしていたフェーズがあるんですよね。しかし、人数が増えるうちに破綻した。

倉貫氏:はい。それで今のツールの開発に至りました。

オンラインでの“いいチーム”の作り方は?

仲山氏:僕のおすすめは、繰り返しになりますが、「みんなで試行錯誤する」という点です。いいチームは“いい仕事”によってできます。“いい仕事”とは、「誰も正解が分からなくて、みんなでやらざるを得ない状態になっている仕事」です。

 そうすると、自然に「どうする? どうする?」とコミュニケーションが生まれてくる。逆に言うと、誰かが正解を知っていたり、最初からきっちり役割分担をしたりしてしまうと、集団的な試行錯誤が起こりにくいので、いいチームにはなれないんです。

 「オフィスに全員集まる働き方」の場合、特に日本企業では、言葉にしなくてもお互いに空気を読み合うことで、「チーム感」を維持しているケースが多いように思います。非公式や非言語のコミュニケーション量が多いわけです。先ほどのeメール導入の課長さんのエピソードは、まさに非公式コミュニケーションの話ですよね。

 これが突如リモートになることで、コミュニケーション量が減る。そこの手当てをしないままだと、コミュニケーション量の貯金がなくなった時点で意思の疎通がうまくいかなくなり始めると思います。トラブルが起こり始めて、お互いに不信感が出てくる。