(写真:PIXTA)
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 新型コロナウイルス禍は人々の暮らしだけでなく、働き方も大きく変えるきっかけとなった。職場に通うことは、ビジネスパーソンにとって、半ば義務でもあった。リモートワークが急速に浸透したことで、通勤の概念も変化している。

 通勤に続いて変わりつつあるのが転勤だ。

 アート引越センターのシンクタンクである「0123引越文化研究所」の調査によると、2022年の3~4月の引っ越し受注件数の見込みは、コロナ禍前の19年に比べて30%増にまで増えるという。在宅勤務が一般化し、手狭に感じたビジネスパーソンが郊外に引っ越す個人の引っ越しも増えているが「昨年からは企業が徐々にウィズコロナの状況に対応し始めたことで転勤需要が回復。転勤による引っ越し件数は例年の数に戻りつつある」とする。

 自粛によって止まっていた転勤の復活――。

 この動きをビジネスパーソンはどう受け止めるのか。少し前のデータになるが、エン・ジャパンが19年に実施した転勤に関するアンケートでは、6割が「転勤は退職のキッカケになる」と回答している。転勤を拒否する理由として、20代は新天地に慣れる大変さを多く挙げ、30代は子育てへの影響、40代は親の介護への影響を心配する。

 HR総研が20年に実施した「異動、転勤に関する実態調査」によると、転勤に関して「原則的に社員に拒否権はない」と回答する企業は6割を超えた。これまで、多くのビジネスパーソンが全国各地から果ては海外まで、「辞令」が下ればそれに従い、慣れ親しんだ町を離れて別の町へと移り住んで働いてきた。その中には生活基盤をすでに作った家族と一人離れ、単身赴任を余儀なくされる人もいる。

 ジェネラリスト志向が強い日本企業は、配置を変える転勤によってあらゆる現場や職場を知り、人や取引先と触れ合う経験を積ませることが個人の成長につながると考えてきた節がある。一方で、転勤に伴う個人やその家族の不満に対しては、手当を支給するなどして穴埋めをしてきた。また、転勤を望まない人向けに「地域総合職」を設けるなど、選択肢を用意する企業も少なくない。

 だが、企業の中で評価が高い人は転勤を許容する人材、つまり企業にとって従順な人という構図は多くの企業でまだ続いている。「転勤を拒否すれば、評価や出世に響く」として、好まなくても受け入れるしかなかった。人材の流動化が進む今、前述のアンケート結果のように、転勤の打診が退職のきっかけになると考える人も増えている。優秀な人材の離職を防ぐため、企業は従来通りに社員に転勤を命じるのは難しくなっている。

 転勤制度を改める企業も出てきた。世界にグループ社員32万人を抱える巨大企業のNTTは昨年、原則として転勤を廃止していく方針を示した。ヤフーは4月から、それまでは原則11時までに出社できる地域に住むという内規を撤廃し、逆にこれまで認めていなかった飛行機通勤も認める(月額15万円まで)とする制度を始める。転勤という概念ではなく、国内どこに住んでもいいという方針転換で、優秀な人材の囲い込みを図る。

 「転勤=悪」のような風向きだが、実際はどうなのだろうか。

 経験者からは、転勤をきっかけに人脈が広がったり、スキルや経験値を上げられたりというメリットを享受できたという声や、自身のキャリアアップにつながったとする声が聞かれる。強制的に職場が切り替わることで、固定化された思考をリセットする機会にもなる。都市と地方、あるいは本社と支社を行き来すれば、それぞれが持つ長所や短所を理解し、これからの組織運営にプラスとなる経験も積める。また地方経済の活性化に貢献してきた側面も否定できない。

 一概に「転勤=悪」と決めつけるのはどうだろうか? ジョブ型の雇用制度が普及しつつある今、転勤にはさらなる逆風が吹きつける。転勤をどう捉えるか。読者の皆さんに、その考えをコメント欄、もしくは下記のアンケートにお寄せいただきたい。

議論が分かれる転勤について、皆さんのご意見を募集します。

 「日経ビジネス」編集部では、本誌2022年4月初旬発売号および電子版において「転勤」にまつわる特集を予定しています。

 つきましては、転勤の是非やご意見、皆さんの転勤経験談を記事作りに反映したく、アンケート調査を実施します。下記のリンクから、転勤に対する思いの丈も含めてご回答いただけましたら幸いです。

 なお、ご回答いただいた方から抽選で10名様に、Amazon(R)ギフト券(1000円分)をお送りします。皆さまのご回答をお待ちしております。

https://xsurvey.nikkeibp.co.jp/researches/C13300251206b

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