特に意識はしていないのに、意思決定できない方向にいってしまう。

森岡氏:マーケティングがあれば、その意思決定について、なぜそれをやるのか、また、なぜそれがうまくいく確率が高いのかを説明できます。小規模な投資でマーケティングを使って勝ち続ければ、大胆な意思決定ができるようになる。前段階がなくて、いきなり大胆な意思決定をするのは、誰でも無理です。マーケティングで成功を重ねていけば、役員が数十人いても大きな意思決定が可能になります。
海外と比べた場合の、日本企業特有の意思決定がしづらい要因はありますか。
森岡氏:日本は法人同士の株の持ち合いが多くて、うまく資本主義が機能していません。あなたの会社の株を持つから、私の会社の株を持ってくださいと、互いに攻撃しないんですね。
だから、経営陣が株主から受けるダイレクトな緊張感は米国に比べて足りない。例えば、米国だと、企業経営がうまくいってなければ、株主が、経営者にプレッシャーをかけて「お前の首をとるぞ」と言ってくる。経営者は、(自分が作った)経営戦略に関して責任を持たなければ、経営者でいられなくなる構造になっています。
日本は違います。株主がどれだけドキドキしようが、経営者に対してレバレッジを効かせにくい。経営者は責任を取らなくていいんです。責任を取らなくていいので、経営者は、大きなミスさえしなければ、自分のサラリーマン人生の上がりを、雇われ経営者として満喫できます。
日本の経営者は、米国に比べて厳しい環境に置かれていないということなんですね。
森岡氏:日本では、経営者に対して、株主からの良い意味での緊張感がもっと伝わることが大切です。株主のチェックも今以上に働かせる必要がある。あまり行き過ぎると短期志向になってしまいますが、日本は今、異常です。私が株主だったら、役員が何十人もいる会社には、ふざけるなと言いますよ。そんなに役員がいると意思決定ができませんから。
でも、日本の会社はどうしてこれほど役員数が多いのでしょう。
森岡氏:サラリーマンの理屈で増えているんですよ。いわば、恩情ですよね。執行役員とか何とか役員とか、いろんな役員がいますよね。この間、「代表取締役執行役員」っていう肩書を目にしましたが、驚きました。こんなことをしていると、日本の会社はつぶれていきます。パフォーマンスが悪くなって、わけの分からないファンドに買われて、資本主義が機能する構造にいやが応でも陥っていく。そうならないと、会社を立て直す段階に入れない。
問題なのは、日本はすでに貧しくなってきているし、日本企業もかなりやばいことになってきているということです。ハゲタカファンドに買われてボロボロになる前に、本当は自分たちの知恵を使って、そうならないようにしないといけない。
マーケティングを使えば、このやり方でやればうまくいくんですといったことをたくさんの会社に成功事例として体験してもらえる。日本には、マーケティングに関わらずに経営者になった人が山ほどいます。需要が何なのかさえ分かっていない。日本でも、マーケティングを信じる経営者が増えて、マーケターの競争がもっと激しくなればいい。私は、日本を救うのはマーケティングだと思っています。
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