
読者とともに日本の再成長への一手を探すシリーズ企画「目覚めるニッポン」。今回は、経営危機にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を再建させた森岡毅氏に話を聞きました。森岡氏は2010年、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)からUSJに転じ、パーク入場者数を年間約1500万人へと倍増させました。現在はコンサルタント会社「刀」の最高経営責任者(CEO)として、各分野の企業の再建に関わっています。競争力を失った日本企業を憂う森岡氏。「日本はすでに貧しくなっている」「日本(の企業経営)は異常」と警鐘を鳴らしています。
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1972年生まれ。神戸大学経営学部卒。96年、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に入社し、北米パンテーンのブランドマネージャーなどを務める。2010年に転じたUSJでは、高等数学を用いた独自理論などを駆使し、業績を回復。17年に設立した「刀」の社名には、「グローバルで戦う企業の武器のような存在となって、日本を元気にしたい」との思いが込められている(写真:菅野勝男、以下同じ)
日本企業は長期の低迷から抜け出せずにいます。原因はどこにあるのでしょうか。
森岡毅氏・刀CEO(以下、森岡氏):カリスマ的な創業者が代替わりをして以降、企業の意思決定が創業者による決定から突然、民主主義に変わるときがあります。それでうまくいく企業はまれにありますが、取締役や執行役員が何十人といる中で、大きな意思決定をするのはとても大変です。
日本の大企業の多くはこうした構造にあるため、たとえ社長が優秀であっても、意思決定をしにくくなっている。それに加え、企業の社会的責任(CSR)やガバナンスといった言葉もはやり、さらに意思決定はしづらくなっています。私は、こうした意思決定のしづらさが、約30年にわたって日本企業が停滞した真因になっていると思っています。
確かに、日本企業の中で大きな意思決定はあまりみられません。
森岡氏:どうすれば、トップがある程度の大きな意思決定をできる構造に切り替えられるのか、私も考えましたが、これはなかなか難しい。雇われ経営者だと、意思決定ができないんです。簡単に言うと、今までの成功の延長線上にあることなら決められるが、そこから大きくゲームチェンジをして飛躍しようとすると、不安になってしまう。前例があるかないかを気にして、もし失敗したらどうしようと心配になるんです。
ほとんどの社長は短期間で交代するので、自分がいるときだけ穏便に収まればいいという気持ちも生まれます。一方で、大胆な意思決定をしようとすると、誰かがそれを止めようとする。こうした背景から、大企業は、今までのゲームの延長線上でしかプレーできなかった。そうしているうちに、(外部や業界の)環境が変わって、変化に適応できず、今の体たらくになってしまったわけです。変わる環境に適応できなければ、経営危機に直面してファンドが入って、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのように誰かが経営を握るパターンになる。
できれば、そうならないうちに手を打ちたいですね。
森岡氏:いろんな人の話を聞いていると、大企業での大胆な提案のほとんどは、ある特定の領域の人が自分の経験と勘とガッツに基づいてやっているんですね。でも、それは、他の専門性を持つ人にとってはすごく分かりにくい。分からないと、前例から外れているのでやめたほうがいいという意見がでる。そして、全員が「やめたほうがいい」という方向に引きずられていって、結局、意思決定できなくなるんです。
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