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 日本が再び成長するための一手を探るシリーズ「目覚めるニッポン」。今回は、日本総合研究所の翁百合理事長に聞きました。デジタル化により経営環境が激変するなか、日本企業の存在感が世界で薄くなってきているといわれます。翁理事長は再び日本企業が輝きを取り戻すためには、オープンイノベーションが欠かせないと説き、そのためには社内に自由度の高い組織が必要だと解きます。翁氏の視点を踏まえ、皆さんのご意見をお寄せください。

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翁百合(おきな・ゆり)
1984年慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了後 日本銀行に入行。92年日本総合研究所へ。副理事長などを経て18年から理事長を務める(写真=栗原克己)

日本企業は世界のなかで次第に影が薄くなってきていると言われます。こうした見方についてどう考えますか。

翁百合・日本総合研究所理事長(以下、翁氏):例えばシンガポールではデジタル化について、政府や経済、社会のそれぞれのビジョンがきちんと描かれています。そのビジョンに沿ってさまざまなことが着実に進んでいますから、スピードも早いのです。そのため米国や中国などから資金が集まっているし、ベンチャー企業も集まっています。

 これに対して、日本はコンセンサスをとるのに時間がかかっている面があります。シンガポールでは「日本の姿が見えない」と言われました。東南アジアはもともと日本に近いはずなのに、デジタルにおいて日本は遅れつつあります。危機感を持って臨むべきだと思います。

 政府が打ち出しているビジョンの「ソサエティー5.0」は社会的課題の解決のために技術革新やデータ活用を進めるものであり、よい方向だと思います。それぞれの企業は課題を分析していけば今ならまだチャンスがあるでしょう。そのためには経営者の果たすべき役割が大きいと思います。

日本企業は再び輝くために経営者は特にどんなことを意識すべきでしょうか。

翁氏:日本の産業界の課題は、付加価値が低い点にあります。コストカットはしていますが、付加価値を提供できていないため、低い価格設定になっている面があります。

 その原因は、大企業が自前主義になっているため革新的なアイデアや技術、スピードがなかなか出ないことにあると思います。状況を変えるには、オープンイノベーションが大切になります。

 大企業とベンチャー企業が長期的視点に立ってタイアップし、大企業はベンチャー企業のアイデアや技術を取り入れる一方、ベンチャー企業は大企業のアセットを使いながら伸びていく。そのような循環を作っていくべきで、これはすべての産業において大切です。お互いのよりよいところを引き出せるウィンウィンのオープンイノベーションにしていく必要があります。

 大企業とベンチャーがいっしょに何か取り組もうとした場合、大企業はとかく意思決定に時間がかかることがあると聞きます。しかし、デジタル・トランスフォーメーション時代にはスピード感が必要です。

 大企業は経営の決断を早くするため、既存事業と新規事業の「両利きの経営」が求められます。新規事業については、組織を戦略的に位置付け、ある程度の自由度を持たせたほうがいいと思います。チャレンジする組織を作り、ベンチャー企業などとどんどん交流を進めるべきです。