「テクノロジーでシニアの社会参加を後押ししたい」

日本社会の閉塞感を打破するには、何が肝心でしょうか。

玉井氏:いろんな人が悩んでいると思います。自分が若い頃は頑張って働ければ生活は良くなっていきましたが、今の若い人はその経験がありません。誰もが漠然とした不安を感じている。

 その背景は、シニアの人口が増えていることに尽きると思います。自分自身も感じますが、年をとると力仕事ができなくなり、頭脳労働も衰えてきます。高齢者のほとんどがそういった課題を抱え、その比率が高まります。社会システムとして不安が広がり、若者はますます元気がなくなる。この悪循環をどうにかしないといけません。

 問題は、日本では勝手に65歳で線引きをされて、働かなくなるか、生産性の低い仕事に回されることです。シニアの社会参加を実現するために、僕はテクノロジーを使いたい。頭脳や筋肉の衰えを補完するのが、ロボットと人工知能(AI)。だから介護分野に参入したのです。

 SASUKEはその1つの形で、介護者の筋力の衰えをカバーするものです。年をとるとだんだんと体力的に介護は厳しくなり、2~3カ月で限界がきます。若い介護士でも腰痛は職業病です。悪い経営者は人を消耗品のように扱う。日本の介護の質が高すぎて、ロボットなど必要ないと考える経営者が多いです。

 シニアでも介護領域に入れれば、人手不足は解消できるでしょう。力がなくても、人生経験は深いし話術は巧み。介護対象者との世代も近く、コミュニケーションもとれる。介護現場に向いていると思いませんか。SASUKEなら筋力をカバーできます。

SASUKEは「お姫様抱っこ」で運ぶとアピールしていますね。どこから生まれた発想ですか?

玉井氏:建設現場か工場みたいに、リフトやクレーンで人を運ぶものしか昔はなかった。資材のようで運ばれる側が嫌がってしまう。では、人をモノではなく人として扱うにはどうしたらいいかと考えて、おんぶか抱っこだろう。おんぶは呼吸器の管などが付いていると危ない。抱っこの心地よさを押し出そうと「お姫様抱っこ」に行き着きました。お姫様抱っこ、女性には憧れがあります。おばあちゃんも「おじいちゃんが亡くなったから、ロボットでええわ」と笑ってくれます。

 2017年に出荷を始め、400台ほど売れています。今年から香港と台湾にも売り出しています。行政幹部にプレゼンすると、「きめ細やかな日本人しかできない発想だ」と評価してくれました。いずれの国も高齢化の課題に直面します。ロボットと人の得意分野を理解し、うまくロボットを活用する必要があります。これからの時代、どんな分野でも変化を受け入れる素地が必要です。そうでないと世界から取り残されていくばかりです。

マッスルが開発に参加した壁を上り下りするロボット「夢ROBO」
マッスルが開発に参加した壁を上り下りするロボット「夢ROBO」

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