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 読者とともに日本が再び成長するための一手を考える「目覚めるニッポン」シリーズ。今回は、ユニークな商品開発でさまざまなニッチトップ商品を持つことで知られる小林製薬の小林一雅会長に聞きました。小林会長は「海外で売れる用品を作るためにも、まず日本市場で商品を鍛えよう」と提案します。小林氏の提言を踏まえ、皆さんのご意見をお寄せください。

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小林一雅(こばやし・かずまさ)
1939年生まれ。甲南大卒業後、62年に小林製薬入社。その後、米国へ渡り、現地でマーケティングを学ぶ。66年に取締役、76年に社長に就任。2004年まで28年間社長を務め現在、会長。(写真=大亀京助)

日本企業の商品開発力が落ちているといわれる場面が増えてきました。新商品を開発するうえで、これまで以上にどんなことを意識すべきでしょうか。

小林一雅・小林製薬会長(以下、小林氏):もっと国内の市場を意識すべきではないでしょうか。

 日本の人口が1億2600万人なのに対して、世界には77億人がいます。市場の大きさだけを見て「日本だけの開発のために一生懸命取り組むよりは最初から世界を目指すべきではないか」という声があります。また海外に研究所を置きその地に合った商品を考えるところもあります。しかし、私はそうした考え方をとっていません。

 日本の消費者の目は厳しいため、日本の市場で鍛えられた商品は海外でも通用しやすいと考えています。日本人が好む商品は特にアジアでは好まれる可能性が高いし、それだけ日本で売れる商品を作ることが大切だと思っています。海外に出す前に国内で売れるというスクリーニングをしています。

 日本でテストマーケットして成功すれば世界に出られるチャンスがあります。つまり、世界77億人のマーケットのために、国内で1億2600万人のテストマーケットをしていると考えています。日本での活動は世界につながっていることを知るべきだと思います。

商品寿命が短くなったといわれるなか、トイレの消臭芳香剤「ブルーレット」が50年を迎えました。なぜ、これほどロングセラーになったのはどうしてでしょうか。

小林氏:商品は改良がなければ育ちません。2、3年先を見ながら顧客のニーズを満たす商品に衣替えしているのが結果的に定番を維持することにつながっています。

 ブルーレットの場合、開発のきっかけは55年ほど前に米国に滞在中、トイレにブルーの水が流れるのを見て驚いたことです。日本に戻ってからさっそく研究を始めましたが、季節によって気温は変わりますし、家族の人数によって使用頻度が違います。ブルーの水がコンスタントに流れるところに苦労して、商品化するまでに5年ほどかかりました。

 発売時の評価は高く、多くの人が「面白い」と言ってくれたものの、当初はなかなか売れませんでした。水洗トイレがまだそれほど普及していなかったことが大きいのですが、それだけではありません。当初は水洗トイレのタンクにつり下げて設置するタイプだけだったのですが、タンクは当時高いところにある場合があり、設置に手間がかかっていました。この点を改善するために、トイレのタンクの上部を流れる水の位置に置くタイプを開発しました。水洗トイレの普及だけでなく、こうした工夫が販売の伸びを後押ししました。

 工夫は設置場所だけではありません。顧客のニーズは最初のうちは色と香りがポイントだったのですが、そこから洗浄効果や除菌効果にシフトしていきました。ブルーレットという商品名にもかかわらず、最近は無色のタイプが伸びています。消臭剤「無香空間」も売れているし、ニーズはそれだけ変わっています。