日本は「デフレマインド」が染み付いている
味の素はこれまで国内市場でも、できるだけ高付加価値の製品を出そうとしてきました。しかし、人口が減る国内では、そうした取り組みは限界ということですか。
西井氏:もちろん、あきらめてはいませんし、これからも努力していきます。ただ、難点は価格を上げて、市場を広げていくための時間が、あまりにもかかることです。高付加価値の製品を出しても、すぐにフォロワーが似たような製品を出してきて、あっという間に同質化競争に陥ってしまいます。

海外の方が時間を稼げるのでしょうか。フォロワーが出てくるのは海外でも同じだと思いますが……。
西井氏:基本的にデフレマインドのようなものがないので、いいものを作ったら、最初から高い価格で販売しても受け入れられます。
例えば、メニュー専用調味料の市場構造を調べると、日本はある一定の価格帯に様々な商品がひしめき合っていますが、米国も東南アジアの国々も、下の方から上の方まで、価格の幅がとても広い。
日本ではデフレマインドが染みついてしまっているため、設定できる価格に上限のようなものができてしまっているということですか。可処分所得が伸びていないのが原因でしょうか。
西井氏:悪循環ですよね。可処分所得が伸びない状況を考慮すると、上の方の価格帯をなかなか狙えず、しかもライバルがすぐにキャッチアップしてくるから、新しいマーケットが育つ前に過当競争になってしまう。そのため、しっかりとした収益を得られず、結果として賃金として還元するのが難しいのです。
基本的に、狙える価格の幅が広いほど、チャンスは大きいですよね。日本での事業が苦しいのは、その幅がとても小さいことです。世界的に見ても、かなり特殊な状況だと思います。
かつて日本は、製品の価格帯が広い先進国でした。ところが、もはや中国や東南アジアの国々の方が、上の価格帯を狙える可能性があります。つまり、上の価格を狙うならば、そうした市場でビジネスを広げてバリューを上げ、そして生産性を向上させていく必要性があるのではないでしょうか。
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