50代社員のモチベーション低下などが多くの企業で課題になっています。日本企業を活気づける上で不可欠な「50代問題」について健康社会学者の河合薫氏とセゾン投信の中野晴啓社長が対談した。その後編。働かない、使えないと評される50代が自らを生かすにはどうすればよいか、また、貴重なヒューマン・リソースとしてを生かす仕組みづくりにはどのような方法があるのか。さまざまな視点から論議が盛り上がった。10月14日号特集「トヨタも悩む新50代問題 もうリストラでは解決できない」もあわせてご覧ください。(注:記事全文の閲覧とコメントの投稿は有料会員限定です)

50代再生にはスキルの棚卸しと学びなおし
司会:今、50代の会社員というのは、終身雇用の恩恵を受けている最後の世代ともいわれています。そしてその多くは会社の仕組みの中で育成されたゼネラリストで、若い人からは「働かない、使えない」と思われてしまうことも多いようです。しかし、河合さんもおっしゃっていたように決してこれまでの制度がダメだったわけではなく、果たしてきた役割もあるし、これから果たすべき役割もあるはずです。そんな50代が目覚めていくためには、何を変えていけばいいのでしょうか。
河合薫氏(以下、河合):「使えない」とか「終身雇用の恩恵を受けている」とか言われようと、意外と気にしてないのが50代なんです。そこがバブル世代(笑)。
もちろん一方で、すごく頑張ってきた人もいます。自分を磨いてきた人と、そうしなかった人との間に実は差があるのでひとくくりにしてはいけません。ただ、全体としては様子見している人が増えています。少し前までは早期退職する人が増えていましたが、ここ数年でシニアの人事制度を見直す企業も出てきましたし、政府も70歳までの雇用を義務付けるとか言ってるので、「うちの会社も変わるかも」とひそかな期待を抱いているんじゃないでしょうか。

健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D.)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は700人に迫る。 日経ビジネス電子版に「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」を連載中。
中野晴啓氏(以下、中野):それはあると思います。会社がなんとかしてくれるのではなく、当たり前のように現役時代が続くということに気が付いてほしいですよね。もう何年かしたら、定年退職の概念もなくなってくるかもしれません。とするとまだ20年、もしかしたら30年現役で働けます。健康でさえあれば時間がたっぷりある。そう思ったら、20代の若者と同じように何ができるのかな、何がやりたいのかと、もう1回磨いてきた能力や技術の「棚卸し」をして、自分の情熱をどこに持てるかキャリア教育をして、見つけるべきなのではないでしょうか。
あとリカレント教育。これからの時代は学んでそれをアウトプットして、また学んでインプットしてアウトプットするというのを生涯やり続ける。今までは50歳になったら、もうインプットはないという前提だったけれども、もうそんな時代じゃなくて、50歳だろうが、60歳だろうが、一生懸命学んで新しいことを身に付けていくことが当たり前の時代になる。ここに気付けばものすごくポジティブに変われると思いますね。

セゾン投信社長。1987年、現在の株式会社クレディセゾン入社。セゾングループの関連会社にて債券ポートフォリオの運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用や海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、2006年セゾン投信株式会社を設立。現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売している。