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 村上ファンド、この名前を誰しも一度は聞いたことがあるだろう。日本の株式市場におけるアクティビストの先駆けとして、「物言う株主」の存在を日本中に知らしめたのが村上世彰氏だ。資本の論理をもとにした正論を武器に、旧態依然の日本企業に次々と物言いを付ける様は時に「よく言った」と喝采を、時に「強引なハゲタカ」と批判を呼んだ。

 標的になった企業は昭栄や東京スタイルに始まり、西武鉄道、TBS、阪神電気鉄道へと広がった。そして2006年に拠点をシンガポールに移し、資本市場の表舞台から消えていた。

 ただ最近、再び物言う株主として株式市場に登場し始めたほか、2018年の出光興産と昭和シェル石油の経営統合合意では、反対していた出光創業家を説得し統合実現にこぎつける役回りも果たすなど存在感を再び増している。
 時代の寵児(ちょうじ)として絶頂とどん底を経験した村上氏から見た日本の課題は一体何か。

 村上氏の提言を踏まえ、皆さんのご意見をお寄せください。

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村上世彰(むらかみ・よしあき)
投資家。1959年、大阪府生まれ。灘中、灘高を経て東京大学法学部卒。通商産業省(現経済産業省)に入省し、在南アフリカ日本大使館一等書記官や生活産業局サービス産業企画官などを歴任。99年に通産省を辞め株式会社M&Aコンサルティング(通称村上ファンド)を設立。

最近、日本企業のコーポレートガバナンス以外にも熱心な提言があると聞きました。

村上世彰氏(以下、村上氏):今、一番気になっていることを言ってもいいですか。日本の貧富の差の拡大です。このままだと日本で暴動が起きますよ。リーマン・ショックの後に米ウォール街で暴動が起きたのと同じことが日本でも起きます。だから貧富の格差を解消しなければいけない。格差は本当に怖い。ない方が絶対いいに決まっている。格差がなく、みんなが割と穏やかに幸せに暮らせる国にすることが、行政にとっても政治にとっても一番求められることなのです。そうしないと国に安定感が出ません。

 10月から消費税が10%になりましたが、こうした間接税は低所得層を直撃しさらなる格差拡大が懸念されます。しかも消費税の限界はせいぜい20%台でしょう。となると税収はなかなか増やせません。持続的に日本が生き残っていくには消費税ではない財源がないといけません。ではどうすればいいのか。

 私がここ1~2年、訴えているのが資産課税です。富裕層や企業の持つお金や株などの金融資産に課税するのです。つまりフローではなくストックに課税するということです。これは消費税より取りやすく、取ることに意味もあります。お金の流れを止めているところにピンポイントで課税するので、ため込んでいても意味がないと家計や企業が資金を投資などに回すようになります。資産、つまり寝ているお金が動く=回ると経済は必ず良くなります。

村上さんのことを、株で一もうけした富裕層の象徴と見る人も世の中にはたくさんいるでしょう。そういう視点から見ると、村上さんの今の主張に違和感を持つ人がいるかもしれません。資産課税は村上さんからすると税負担が増すはず。自らの腹を痛める提言をなぜするのでしょう。

村上氏:1つは人間的な問題です。同じ人間として生まれてきたのにそんな差があっていいのか、とそりゃ思いますよ。それに貧富の差が広がれば、結果的に経済活動に支障が出ると僕は思いこんでいるのです。同じ考えを持つ方はアメリカのファンドにも多いのです。(米著名投資家の)ジョージ・ソロスも、ウォーレン・バフェットもそうです。

 不遜な言い方になってしまいますが、私もこれだけお金持ちにさせてもらいましたが、自分の中で子供にお金を残したいという思いは全くない。お金は使わなければ意味がないと思っているので、お金をぐるぐる回すことに生きがいを感じているのです。ですが貧富の格差があるとお金が回らなくなり、経済自体が悪くなります。そしていずれ暴動が起きるのです。まさに今の日本がそうです。また投資という観点で見ても、長い目で見ればその方が社会全体が得をすると思っています。経済が活性化されて社会も安定するのですから。