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 読者とともに日本の再成長への一手を探るシリーズ企画。今回は、世界的な経済学者、米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授です。世界が日本に期待するイノベーションとはどのようなものか、社会問題解決のため、企業に求められる役割は何か、そしてこれから必要な新しい資本主義の在り方とは何か。スティグリッツ氏の幅広い提言について、皆さんのご意見をお寄せください。

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ジョセフ・スティグリッツ氏(米コロンビア大学教授)
2001年にノーベル経済学賞を受賞。世界銀行の元チーフエコノミスト兼上級副総裁。クリントン政権では経済諮問委員会委員長を務めた。(写真は陶山勉、以下スティグリッツ氏のすべての写真)

日本では破壊的なイノベーションがなかなか起こりません。イノベーションを促進するために重要なことは何でしょうか。

ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授(以下、スティグリッツ氏):日本は、洗練された技術を生み出してきた長い歴史があると思っています。しかし、確かにそれほど破壊的なイノベーションだったわけではないでしょう。

日本人はもっと世界の英語コミュニティーに入れ

 2つの側面があると思っています。1つは、日本はもっと大学に投資すべきということです。もっと英語を学んで、国際的な科学者のコミュニティーと一体化するための投資が必要です。

 なぜなら、イノベーションを起こすうえでそれが障害になっているからです。政府が基礎研究や応用研究をほとんどサポートしないのであれば、社会の生産性を高めるイノベーションを起こすことが大切になると思います。それが私の強調したい点です。その違いは次のようなものです。

 米ウーバー・テクノロジーズのライドシェアは破壊的なタクシーサービスですが、基本的には位置測定システムを使ってより効率的に車を使うビジネスであり、そのシステムは政府の研究に基づいていました。つまり、民間企業が研究の最前線を動かしたわけではありません。

 真に大きなイノベーションは、地球規模の位置測定技術でした。つまり、多くの破壊的イノベーションが規制を弱めてきたことが分かります。しかし規制は、理由があって作られてきたわけです。規制の目的は、車とドライバーの安全性を確かなものにするためでした。ですから、破壊的イノベーションの中には不健全な結果をもたらすものもあります。

 社会に今もっと必要なのは、気候変動やエネルギー危機のためのイノベーションと、人口高齢化に対応するためのイノベーションです。