幹部の能力評価をして科学的に伸ばす米国企業

社内でそうした大きな変化に対応する人材を育てるにはどうすればいいのでしょうか。外部から採るだけで、社内の人材を強化できなければ意味がないと思いますが。

渡辺氏:チャンスを与えて育てるところが多いですね。人間ってストレッチすると伸びるんですよね。例えば30代でまだそこまで能力がないような人にも、「南アフリカで社長をやってこい」と言えるかどうか。買収先の企業のPMI(買収後の統合)を任せるなど、若いときにチャンスを与えることが大事だと思います。失敗も含めて、そういうチャンスを自分のものにした人というのはやっぱり伸びてくるんですね。

一種のエリート育成ですね。

渡辺氏:そうやってチャンスを与えながら、例えば30代を含めた50人位のプールをつくって、それを次第に15人、5人に絞り込んでいくのです。ただし、入れ替え戦をやりながら。そうやって早めに教育を受けた人材は鍛えられていますが、まだ実践している企業は多くはないという感じでしょうか。

ごく一部の企業は結構前からそうした幹部育成をやっているように思いますが、効果は不明なままです。米国との差はなんでしょうか。

渡辺氏:例えば今、日本企業でも導入するところが増えてきましたけど、米企業は執行役員クラスの15人程度など、次世代の経営者にアセスメント(評価)を受けさせます。

 我々のような会社がそれを請け負います。インタビューしたり、論文を書いてもらったりして、その人物のリーダーシップや戦略性といったことを評価して、結果をフィードバックするのです。

 そのうえで本人に、「あなたはこういう能力がある」「ここが欠けているからもう少し能力開発をしてください」といったことをきちんと伝える。我々は世の中の人材マーケットを見ていますので、その会社の中で1番かどうかではなくて、市場において「あなたはどのぐらいにいる」ということも伝えます。米国では70~80%の上場企業がやっているでしょうが、日本では数%といったところです。

日本に適した幹部育成方法を考える必要がある

それで本人に能力開発をしてもらうというわけですか。

渡辺氏:それは大事ですが、会社側もそのアセスメントの結果を見て、「彼は有望で次期社長になるかもしれないけど、ここが足りないのでそれを伸ばすためにシンガポールの統括会社でやってもらおう」といった取り組みをする。あるいはこの人はすごく能力は高いけどグローバルなマネジメント、外国人のマネジメントはちょっとまだ経験がない……と見る。そしてアクションをとる。科学的ですね。

日本企業の場合、あまり選別的な教育は周りとの関係を悪くして逆効果になりかねないといった考え方もあります。

渡辺氏:私も米国のやり方がすべていいと思っているわけではありません。要はやり方です。経営者がもっと意識を持って幹部を育成する必要があるのでしょう。例えば幹部候補者が海外で仕事をするにしても、日本企業の場合は本社と米国、本社と中国といった間で動く。でも米国企業は能力をどう生かし、伸ばすかを考えた上で海外をぐるぐる回す。

 中国にいた人が次に日本でCEOをやって、その後はロシアで、といった形です。言葉の問題もあるので同じようにはできないかもしれませんが、日本企業の今の方法はもっと変えられると思いますね。日本に適したやり方を考える必要があると思います。