すべてではないでしょうが、社内の人材では能力的に足りないケースが増えている。
渡辺氏:日本企業の場合、現場からたたき上げで部長になり、そして役員になる、という形でした。それがすべて悪いわけではないですが、今は「トランスフォーメーション(構造改革)」や「ディスラプション(破壊)」とよく言うように、既存の組織を壊して新たなことに取り組まなければいけないことがある。それは社内だけで育った人には難しいということです。
そういう変化、チェンジしたい会社というのは、外から刺激を与えてくれるような人をあえて採ることが必要になっています。
従来と違う角度で事業に切り込める人材が求められる

最近は内需型企業までグローバル市場に出ているし、逆に外資が入ってくることもあり、競争は一段と厳しくなっています。どんな企業がそういうふうに動いているのでしょう。
渡辺氏:大企業だから進んでいるということではありません。経営者のマインドの問題だと思います。危機意識の強い経営者のいる企業は、小さくてもそういうことをしっかり考えてやっている。だから我々がお手伝いしているのは売上高が数兆円の企業だけではありません。規模の差よりも経営者の危機感の差です。
グローバル化もデジタル化も既にかなり前から本格化しています。例えば20年前、あるいは10年前と今の違いはなんでしょう。
渡辺氏:変化のスピードの違いではないでしょうか。例えば今、スマホでここまでいろんな仕事ができるようになるなんて5年前は誰も思わなかったでしょう。あるいは中国がここまで伸びてきたり、インドが出てきたりして、日米あるいは韓国だけ見ていればいいわけじゃない。
「VUCA」といいますよね。「Volatility(変動性・不安定さ)」「Uncertainty(不確実性・不確定さ)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性・不明確さ)」です。本当に混沌として先がどうなるか分からない。
確かに自動車やエレクトロニクス産業などは前々から海外に出ていました。でも、今は外食や介護など、いわゆるグローバル化が遅れていた業界も海外市場を狙って動いている。そこに、最近まで大手エレクトロニクス企業でグローバル事業を担当していたような人が入るといった動きが続いています。エレクトロニクス産業がかつてより力を失ったこともあり、人の移動が起きたことも大きいですね。
最近、どんな人材のニーズが多いですか。
渡辺氏:グローバル化でしたら、海外の現地で会社を設立したり、事業運営をしたりする人材が求められています。また、チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)とか、チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)といった形で、テクノロジーの視点から戦略を考え直せる人材は非常にニーズが高いですね。社内のさまざまな事業分野にテクノロジーの視点で横串を刺すとどういう新しいビジネスができるのか、といった今までと違った角度で事業に切り込める人材が求められています。
日本企業の場合、そういう動きはなかなか難しくはないですか。
渡辺氏:確かに横串といっても容易ではありません。(社内の部署・組織の論理で関係者が動く)サイロになっているところもありますし。だから我々もとにかく変える能力のある人、巻き込んでコミュニケーションしてリーダーシップを見せて、あの人ならついていきたいと思えるような人を探すようにしています。