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 日本の再成長への一手を考える「目覚めるニッポン」。今回は、経営幹部を企業に紹介するエグゼクティブ・サーチの世界大手、米ハイドリック&ストラグルズの渡辺紀子パートナーが、企業の競争力の中核である経営層をどう作り、育てるべきかを提言します。

 渡辺パートナーはデジタル化など大きな環境変化に対応するリーダーを育成するためにも、能力や経験を踏まえたうえでより「科学的」に能力開発を進めるべきだと主張します。外部から経営人材を採用する意識は徐々に広がってきていますが、内部でもトップが意識して次世代のリーダーを育てていくべきだとの考えです。

皆さんのご意見をお寄せください。

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渡辺紀子氏
東京大学中国文学科を卒業後、1993年豊田通商入社。中国勤務などを経て2011年、大手エグゼクティブサーチ会社、縄文アソシエイツ入社。2015年にハイドリック&ストラグルズへ。ヘッドハンティング業務に就き、大企業から中堅オーナー企業、成長企業まで幅広くカバーしている。(写真:菊池一郎、以下同じ)

2011年にヘッドハンティングの世界に入られて約8年ですが、外部から経営幹部を呼ぶことについての日本企業の意識は変わってきましたか。

渡辺紀子氏(ハイドリック&ストラグルズパートナー、以下、渡辺氏):企業も人も全く変わりましたね。私は普段から、いろいろな情報ソースからスカウトする対象になり得る人を探しています。対象は社長、役員、部長など幹部クラス以上で、手紙を書いたりメールしたりしてお会いするわけです。

 かつては「ヘッドハンターに会うこと自体許されない」「今の会社を辞めるつもりもないから会わない」みたいな感じでしたが、最近はお声がけすると半分くらいの方はお返事を下さいます。仮に転職を意識していなくても、「いずれどうなるか分からないから会っておこう」というスタンスに変わりました。以前は世界有数の大企業の方はまず動かなかったのですが、そういった方でも会っていただけるようになりました。

グローバル化、デジタル化などの中で経営幹部のスカウトが拡大

何が変わったのでしょうか。

渡辺氏:競争環境が厳しくなり、業績が悪化すれば早期退職の募集もあります。またM&A(合併・買収)も活発になり、急に英語が公用語化されるといったこともある。いろいろな変化があるので、常にアンテナを立てておいて次の機会に備えようという意識が高まっていると感じます。

企業サイドはどうでしょうか。社長、役員、部長クラスを外部から採ろうとする姿勢はどう変化していますか。

渡辺氏:約10年前は、積極的に幹部を外から採ろうとする企業は上場企業でも100~200社程度に限られていたと思います。オーナー系で成長している企業が、拡大によって必要になってきた能力を持つ人材を採っていました。

 でも今はそういう特定の企業に限らず、全部とは言いませんがかなりの企業が外から部長以上を採るようになってきました。

個人が感じているのと同じく、競争環境の激化が企業の姿勢を変えているのですか。

渡辺氏:グローバル化やデジタル化といった変化が大きいですね。既存のビジネスだけでは成り立たないから、全く違う事業領域に出ていかざるを得なくなる。あるいは、コンプライアンスの問題が増えてきたりする。すると社内で育てた人材だけではニーズを満たすことができなくなってきたのです。

 財務や経理の人は社内にいても、本格的にグローバル化するとなると社内だけでは対応できなくなる。例えば移転価格税制とか、グループ内でグローバルな資金効率を上げるキャッシュ・マネジメント・システムを作るといったことをこなせる人材が必要になるのです。そうすると、専門性の高い人、あるいはグローバルな人材を呼ぶということになるのです。社内にいたとしても、もっと優秀な人を連れてきてビジネスを成長させないといけない。そうしないと国際競争に勝てない。そういう厳しい世の中になったということだと思います。