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 シリーズ企画「目覚めるニッポン 再成長へ、この一手」。今回の提言は、ヘイ(東京・渋谷)の佐藤裕介代表。個人が自分のECストアを無料で持つことができる「STORES.jp(ストアーズ・ドット・ジェーピー)」や、実店舗を運営する事業主が0円で導入できる決済システム「Coiney(コイニー)」などを運営しています。25歳でグーグルを退職後、創業した広告技術スタートアップのフリークアウトを含む2社の上場を経験するなど、ミレニアル世代を代表する連続起業家です。佐藤氏は、これからの日本の成長をけん引するのは個人事業主や中小企業だと主張します。そのために、テクノロジーを活用して日本経済を大企業主導から個人主導へと「民主化」し、「個人でできることがもっと広がる社会」の実現を訴えます。

 佐藤氏の提言を踏まえ、皆さんのご意見をお聞かせください。

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連続起業家でミレニアル世代を代表する経営者、ヘイの佐藤裕介氏(写真:陶山 勉、以下同じ)

佐藤さんが手掛けられている「STORES.jp」「Coiney」というサービスは、どちらも個人事業主や中小企業を対象にしています。なぜでしょうか。

佐藤裕介氏(ヘイ社長、以下、佐藤氏):僕が実現したいのは、「個人でできることがもっと広がる社会」です。

 僕は、物やサービスをゼロからつくり出すことを「高尚なこと」「ハイレベルなこと」と、特別なことのように考える風潮に、大きな社会的な課題を感じています。分業体制によって大企業が本格的な大量生産を始めたのは、せいぜい150年ほど前のこと。それまでは自営業のような働き方が主流でした。当時は農業をはじめとして、自分たちで付加価値をゼロからつくり上げていこうという働き方が当たり前だったはずです。

 しかし、20世紀初頭以降、企業が巨大化して仕事がさらに細分化していったことで、ゼロから価値をつくり上げていく過程が個人には見えにくくなってしまいました。個人として素晴らしい貢献をしているのに、大企業の中ではその価値が見えにくい。自分のアウトプットや関与が見えないと、本当に自分ができること、つまり自分の可能性が分からなくなってしまう。もっと言えば、個人の労働や努力の価値が相対的に低く見積もられているかもしれません。これは、ものすごくもったいないことだと思います。

 そもそも、これから日本の人口は減り続けていくので、1人当たりの生産性をもっと高めていかなくてはなりません。生産性が現状のまま人口が減っていけば、今の国内総生産(GDP)も生活水準も維持できなくなるでしょう。その点からも、もっと個人や中小企業でも価値を創造していける仕組みが必要だと思います。

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これまでは、企業は規模を大きくすることで生産・販売活動の効率化を進めてきました。これからはそういう時代ではなくなると?

佐藤氏:大量生産がこれまで大きな役割を担ってきたのは、規模を大きくすることがあらゆる経済性を改善するという前提があったからです。大量に作ることで1個当たりのコストを下げ、価値ある製品を安く消費者に提供することができました。

 しかし、その仕組みは消費者の多様なニーズのでこぼこをある程度平準化することで成り立ってきました。今は逆に、少ない需要に少ない供給をマッチングさせる仕組みが発達してきています。その結果、大量生産を実現するために見逃されていた小さな需要にも対応できるようになってきました。

 これまで、個人事業主や中小企業は、規模を武器に効率化を進めてきた大企業に対して不利な状況に置かれていました。しかし、インターネットのおかげで「規模が小さいから不利になる」という状況が、少しずつ是正されてきています。