ソニーやパナソニックが農業をやればよい

榊原さんは農業にも期待しています。

榊原:日本の農産物は非常に品質が高いので、輸出産業として伸ばすべきです。コメはもちろん、果物もありますよね。

農業を輸出産業として育てるのに、政府の支援は必要ですか。

榊原:必要です。この分野は事業主体が零細です。これを大規模化すべく、政府が規制を緩和する必要がある。戦後の農地改革は不在地主をなくし、自作農をつくる点では有効でした。しかし、事業主体の規模を小さくするという負の影響もありました。これを再び大規模化し、企業の参入を認めるべきです。ソニーやパナソニックが農業をやればよい。その方が生産性が高まり、収入も大きくなります。抵抗は大きいですが。

 農業に加えて漁業、特に沿岸漁業も同様です。遠洋漁業には大企業が参入していますが、沿岸漁業の事業主体はずっと小さい。

 農業にせよ、漁業にせよ、今は第1次産業に注目すべき時です。第2次産業である製造業と、第3次産業であるサービス業は比較的順調に伸びてきた。残った第1次産業にポテンシャルがあります。

消費税率を20%に

社会保障の持続性に疑問が持たれています。

榊原:社会保障や財政問題を解決するのは簡単です。消費税の税率を上げればよいのです。高齢化が進むにつれ社会保障費は増えていく。何かしらの手段でファイナンスする必要があります。ただし所得税の実効税率は既に約30%に達しており、これ以上上げるのは困難です。人々の労働意欲をそいでしまいますから。消費税を上げるしか手がありません。

消費税が持つ逆進性を気にする必要はありませんか。

榊原:それほど強く気にする必要はないと思います。日本は他国に比べて所得が平等に分配されていますから。

 日本は高福祉・高負担の欧州型の福祉社会を目指すべきだと考えます。その欧州諸国の消費税率はおよそ20%。日本もいずれその程度まで税率を上げていき、社会保障費の財源にすることになるでしょう。今は英米型の小さな政府を志向していますが。

今秋に10%への税率引き上げが予定されています。これを20%に上げると、約25兆円の歳入増が期待できます(1%=2.5兆円*で計算)。2019年度の特例公債の発行額がおよそ26兆円ですから、国債の発行額をだいぶ減らすことができますね。

*:諸説あり

次ページ 元が国際通貨になるのに50年はかかる

この記事は会員登録でコメントをご覧いただけます

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題