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いつから眠ってしまったのでしょう。

野口:日本人は平成の間、眠り続けました。日本人は1980年代に「成功した」と思った。そして90年代の初めには、1人当たりGDPで米国を抜きました。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』などの書籍が広く読まれました。そのときに比べて「駄目になっている」ということは認識していると思います。でも、その深刻度合いが足りないのです。

 アベノミクスの6年間においてさえ、日本は成長できなかった。日本のGDPはこの間、ドルベースで見ると減少しました。企業の業績が上がり、経済的に良い期間と思っている人が圧倒的に多いことでしょう。でも、国際的な視点に立てばそうではない。この点も、日本人は認識できていないと思います。

日本の大学は19世紀で止まっている

日本は何を変えるべきでしょうか。

野口:イノベーションを生み出し、強い産業を興す。そのためには人材を育成することです。大学・大学院といった高等教育の質を高めるのです。日本の大学は、依然として19世紀のレベルにとどまっています。農学部が学生数や教授数、予算などで見て全体の1割を占めているのがその象徴です。農学部は非常に強い力を持っています。これは旧帝国大学において特に顕著です。

 これに対して中国の大学は既に21世紀型になっています。日本の大学も最低でも20世紀型に移行しなければなりません。

「20世紀型」や「21世紀型」は19世紀型とどう異なるのですか。

野口:「20世紀型」はものづくりの製造業に重点を置くもの。「21世紀型」はコンピューターサイエンス、中でも「ABC」ですね。「人工知能(AI)」に「ブロックチェーン(Blockchain)」、そして「クラウド(Cloud)」に力を入れる。米国の著名な雑誌が作成したランキングでは、中国の清華大学がこうした分野のトップになっています。

中国はなぜ、イノベショーンを生み出す国に成長できたのでしょう。

野口:それは文化大革命があったからです。今、イノベーションを生み出す中心になっている清華大学は、文革当時は紅衛兵の拠点でした。ですから文革時に「古い清華大学」が破壊されたのです。偉い先生がいなくなり、米国留学から戻ってきた80年代生まれの若い研究者が好きな研究をできるようになった。「80后」と呼ばれる人たちですね。

 つまり「かえる飛び(leap frog)」と呼ばれる現象が起きたのです。遅れている者が、先を行く者を追い越す。なぜ追い越せるかというと、古いものに縛られないからです。

文革が終わってから「80后」が帰国するまで、時間が空いていますね。

野口:中国ではこの間、「国営」企業の改革が進みました。今は「国有」企業が問題視されていますが、当時は、国が直接統制する「国営」企業でした。

 企業の世界でも破壊が起きたのです。もちろんすべての産業ではなく、エネルギーや石油、金融、通信の分野では古い企業が残りました。しかし、エレクトロニクスなど消費財を扱う企業では民間企業が力を伸ばしました。

 ここでもキーワードは「かえる飛び」で、典型がフィンテックです。なぜ中国でキャッシュレス決済が浸透したかと言えば、銀行が不便だったからです。アリババ集団は、銀行を介すと決済手数料が高いからアリペイ(支付宝)を設立した。そして、銀行の支店が少ないから、アリペイは普及したのです。