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GDPの伸びが停滞しても日本は依然として裕福な国

ロスリング氏:では、データを見るときの注意点について、お話ししましょう。私たちはしばしば、各国の状況を議論するとき、2つか3つの国に注目し、それ以外の国々との比較をやめてしまうものです。

実際、私もこのようなグラフを作ってきました。1つは国内総生産(GDP)、もう1つは、1人当たりのGDPの推移を米国、中国と比較したものです。

GDP(購買力平価、インフレ調整済み)の推移
(出所:Gapminder、http://bit.ly/2JG56zB
1人当たりGDP
(出所:Gapminder、http://bit.ly/2JKGkhX

ロスリング氏:例えば、このグラフの中の日本の線が示すように、GDPの停滞について議論するとき、他の国と比べて成長率が急激に減速しているということしか取り上げませんよね。

 人口減少についても同じです。確かに、人口が減少に転じたことは、最も大きな問題の1つでしょう。高齢者が増えて多額の社会保障費が必要になる一方、それを支える労働人口が減っていくわけですから。高齢者の増加に伴う社会保障費の拡大と労働人口の減少は、明らかに大きな問題です。

 しかし、一方で、このチャートを見てください。横軸に所得水準(1人当たりGDP)、縦軸に平均寿命をとったものです(バブルの大きさは総人口)。

所得レベルと平均寿命
(出所、Gapminder、http://bit.ly/2JFZkxK

 あなたも私も、この世界の中で最も裕福な国々のグループ(レベル4)に住んでいます。世界の国々と比較すれば、私たちは右上の隅っこにいるんです。私たちはそのことを忘れてはなりません。GDPが減少し始めたとしても、依然として世界の中で最も裕福なのです。

 今、日本経済が停滞している一方で、レベル1〜3の国々の経済はより良くなってきています。とても早く成長しており、どんどん右上に移動してきています。それを国家間、企業間の競争と捉えれば、私たちの競合相手になり始めていると言えます。

 先程、あなたがおっしゃった懸念は、私たちが住んでいるスウェーデンにも同じようにあります。これらの国々が実際に私たちの方向へ成長していることに、驚きすら感じています。

 こうした状況で私たちが感じる「将来への絶望」は、私たちが自分中心の局所的な文脈において、こうした変化を捉えるからだと思います。起きている変化が自分たちに不利な状況をもたらすかもしれないと恐れるのは、ある意味で合理的でしょう。

 しかし、思い出してください。所得水準が低い国々に住む人々は、とても厳しい時代を過ごしてきました。そして今、経済が良くなってきて、ほぼ確実に、誰もがレベル4に近づく道を見いだせるようになりました。

 所得水準の低い人々を、いつまでも今の世界に押しとどめておくべきではありません。ほぼ間違いなく、ほとんどの人々がレベル4の世界に上がって来られる可能性があることを、理解する必要があります。

 多くの国が右上へ動いていくと私たちが暮らす社会が変化するかもしれませんが、それはおそらく、私たちにとってもいいことでしょう。なぜなら、これらの人々は全員、消費者になるわけですから。

 私たちが、自分たちの国が直面している状況を心配していても、より多くの人たちが私たちが生み出す商品を欲しがるようになります。発想を変え、働き方をより生産的に変えることができれば、これまでにないマーケットが目の前に広がるはずです。

 私たちは、既に裕福になったレベル4の人たちに向けて、より魅力的な製品を作らなければならないという固定観念にとらわれてきました。しかし、それ以外の国々で多数の消費者が現れるということを、しっかり理解してきませんでした。やるべきことはたくさんあります。

 ようするに、これまでのマインドセットを変えることが、目前の変化に対する解決策の1つになるのではないでしょうか。