ティールの本格普及は2030年から?

ティール組織はこの先、日本国内で広がるのでしょうか。

小林:組織の在り方は、人々の価値観と連動します。そして、個人の仕事の意義や、人の活性度を高める生命的なシステムとして組織を捉える思想や価値観は、今後もしばらく広がると思います。

 特に人口減少が進み人手不足が進む中、その価値観を色濃く持つミレニアル世代以下の人材を呼び込むためにも、自律性や創造性を高める環境づくりは経営の重要な課題になるはずです。その中で、ティール的な思想を持ったマネジメントの方が、より相性がいいと判断されるケースは増えるのではないでしょうか。

 これは現在、起こっている働き方の変化にもつながっています。日本でも副業やフリーランス化が進んでいますが、私の周りでも思いや意義に共感する人たちが個人ベースでつながりながら、仕事やプロジェクトを生み、新しい価値を仕掛けているケースが増えています。こうした個人が互いにつながり、プロジェクトベースで働くようになる流れともティール化は合っていると思います。

佐宗:人の“群れ方”は、リーダーの価値観に影響を受けるので、価値観の変化に合わせて働き方や群れ方は自然に変わると思います。

 例えば僕の印象だと、50代以上のビジネスパーソンは、孫正義会長や日本電産の永守重信会長のような強いトップダウンのスタイルが良しとされてきたと思います。ここでは、リーダーのエゴや熱量が会社の器になる。

 その下の、40代のインターネット起業家世代――分かりやすく言えば、「ホリエモン世代」になると、経営者のスター化とその方向性の中で好きなことをやることを推進するような、トップダウンとボトムアップが融合してきた時代です。ここでは、リーダーが有名になり、お金を集めながら、会社を創造的な環境にする組織としての、創造性が大事になります。

 そして、それよりも若い30代後半以下の世代になると、AIやロボット、宇宙や農業などの分野で、テクノロジーを活用した社会課題解決をテーマにした起業家が増えています。彼らは「エコシステム」という概念を普通に口にし、社会課題に対して、自分の会社がその一部となって、多くのプレーヤーを巻き込みながら解決するような姿を目指しています。彼らのようなリーダーたちは、エゴが強過ぎず、むしろより大きな社会の一部であるという視点を持っている印象があります。

 つまり自分の利益は、ミッション実現のための可能性を担保するものと捉えて、社会的に意味があるものを大事にしたい人がだんだんと増えてきているんです。

小林:肌感覚的には、インターネット世代で新しい価値観を持ち始めた今の30から40代が、企業のマネジメントを担うようになる10年後くらいに、構造が一気に変わるのではないかと思っています。そのときこそ本当の意味での移行のチャンスで、今はそこに向けた準備期間。タネをまいて、流れを起こす時期なのでしょうね。

オセロの四隅を押さえて、一気に黒に変わるのが2030年ごろである、と。

佐宗:そうでしょうね。2020年の東京五輪を過ぎると、本当にいろいろな社会問題が表面化してくるはずです。少子高齢化に伴う医療、年金、地方、子育て……。いずれも課題は山積しています。

 ただ課題先進国だからこそ、変化しないといけないという危機感も広がるはずです。それがビジネスを持続可能なモデルに変える大きなてこの役割を果たすこともある。新しい価値観への移行に5年くらいかけて、次の5年で今の資本主義モデルではない形でお金を稼ぐ方法を見つけていく。僕自身が、40代をどう過ごすのかという計画を立てながら、そんなことを考えています。

 今、40代以下の世代は新しい時代にどう生き、どう働き、どんな社会をつくるのかということを、改めて考え直す時期に来ている。『ティール組織』はとてもいいきっかけになっているんだと思います。

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