香港のデモとティールの共通点

佐宗:ティールのような次世代型組織は、突き詰めていくと組織のトップがどんなリーダーシップのスタイルを執るか、というリーダーシップについてのスタイルであり、そのスタイルを作るガバナンスの議論に集約されると思っています。

 ティールのような組織では、経営者にとってみれば、自分の会社なのに自らの権限を分散させて集団による合意形成を進めることになります。その結果、全体の自律性や創造性が高まることに意義を感じる人が実践する道なのです。

 最終的には、経営者自身がボトルネックになることを感じて、本人が組織のアイコンである必要すらなくなっていき、その人がいなくても生き続ける、中心のない文化や思想を広げる動きになっていく。

 今の香港のデモのような、明確なリーダーのいない動きは、実はティール的なのです。どこで政府と衝突しても、緊密なネットワークの中で情報が共有され、それをベースにデモ隊が動く。政府にしてみればどう対応すればいいのか分からないでしょうし、あれはティール組織っぽいですよね。

 一方で、いわゆるカリスマ経営者と呼ばれるソフトバンクグループ創業者の孫正義さんや、ファーストリテイリングの柳井正さんといったリーダーシップスタイルを志向する人には、ティールは合わないでしょうし、興味も持たないのではないでしょうか。経営者や投資家によっては、「自分はもっと大きな結果を早く生み出したいのに、全然インパクトが足りない」と思うこともあるのです。

そう考えると、四半期ごとに成長を求められる上場企業などはティール組織化が難しそうですね。

佐宗:最終的には、誰が株主で、どんなガバナンス体制をつくるかという問題なのでしょうね。株式公開をすると、企業は常に成長を求められます。またスタートアップ企業など、早めの株式上場を目指す場合は、ヒエラルキー型でガッと売上高を伸ばして株式上場に持っていく方が合理的だと思います。ただ、このような流れも、投資家が社会インパクトや長期投資を行っていく必要性が議論されていく中で変わっていくかもしれませんが。

 ティール組織を実践するには、現在では、スピードや売上高、成長以外のところに意義を見いだせる経営者でないと難しいはずです。オーナー企業や公益法人、NPO法人のようなケースでの実践例が多くなるのは自然ですね。

 いつも次世代型組織のガバナンスについて議論を重ねると、「結局は株主構成をどうするのか」という話になるんです。特にスタートアップ企業の場合、利益だけが目当ての投資家もたくさんいます。その中で仮にティール組織を実践したいなら、その理念に共感する株主だけを選ぶ必要がある。事業の目的やビジョン、ミッションも伝えた上で投資をしてもらわないと、話が食い違ってしまいます。ティール組織は、社員はもちろんですが、株主や投資家を選ぶ際にミッション共感度や長期的なコミットメントをしてくれるかどうかが非常に重要になると思います。

 既に株式上場している大企業も、本来ならばMBO(マネジメント・バイアウト=経営陣が参加する買収)をしてからティール化を進めるべきなのかもしれませんね。

 既存のヒエラルキー型の大企業の中では、実践は難しいといわれていますが、ヒエラルキー型の組織の中においても、革新性を常に持ち続けるためには、インフォーマルネットワークを活用するのが重要なので、そこで実践するのが良いと思います。いわゆる非公式な集まり、――例えば最近で言えば、「ワンジャパン」のような大企業に所属する若手社員たちの有志ネットワーク――の力を活用するには有効でしょうね。

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