選挙制度も限界を迎えている

 最後に同じような方法で、政治について考えてみましょう。最初のステージは階級制度の世の中ですから、明確に皇帝や王が国を統治します。この統治を助けるためにさまざまな貴族会議がありました。王や皇帝を批判することは許されず、仮に体制を批判すれば、すぐに監獄に入れられました。

 産業革命後のステージでは、誰が世界を統治しているのかというと、最も良い政策を出せる政治家を、選挙で決めています。ただ、この仕組みにも欠点があります。経済合理性が何よりも重視されるこのステージの世界では、選挙にもその価値観が影響を与えます。

 例えば選挙前にはたくさんの世論調査が実施され、メディアはこぞって誰が優勢か、選ばれるのは誰かという結果を予想し、報じます。あらゆる世代で今、最も選挙に積極的なのは50代で、彼らは自分にとって重要性の低い選挙では、優勢な人に投票しようとします。投票という、それぞれの人に自由な意思決定が委ねられた行動でさえ、人間はより合理性の高い候補者に投じようとするわけです。

 けれど、世界はさらに複雑化しています。教育や農業、人間の健康と同じように、世界そのものもさまざまな文化の存在する生命体と捉えるなら、それを一部の賢い人に決めてもらうのではなく、それを構成するいろいろな人の声を吸い上げてルールを決めていくこと。「最も良い政策を出す人を選ぶ」という方法の限界に直面し、世界のあらゆるところで、実験が試みられています。

 例えば私がよく知るフランスの小さな村では、選挙で政治家を選ぶのではなく、住民たちがそれぞれの興味のある分野や得意分野について、直接話し合い、方針を固めるような運営をスタートしています。選挙で選ばれた人は、住民たちが議論を重ねて導き出したルールを、後押しする存在です。議論がより活発になるようなサポートをするのも役割の1つですが、政治家が自分たちだけで物事を決める仕組みではありません。ほかにもいろんな方法が考えられるはずです。

 教育、農業、医学、そして政治……。あらゆる分野で、これまでとは異なる新しい世界が出現しています。新しい世界を見つけるには、私たちが何に照準を定めるべきかを知っておく必要があります。

 私たちは今やすべての構造に疑問を抱き始めています。みんなが何かしら、「今までの管理方法や経営方法ではうまくいかない」と思っている。教育システムも政治の仕組みもどんどんと壊れ、金融システムも限界に直面していると感じている人は多いはずです。

 従来のシステムがいろいろなところでがたつき始めているのを見ると、私たちはつい、「前は良かった」と過去を懐かしみ、昔に戻ろうと考えたりもします。「もう一度、米国を偉大な国に」「EUなんか出てしまえ」「昔の憲法に戻してしまおう」と思ってしまうわけです。

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