人間さえ機械の一部となる現代社会

 これから皆さんに、これから取り上げるさまざまな分野が、農耕社会と、工業社会、そして生態系社会ではどう見えるのかを紹介します。

 最も分かりやすいケースからスタートしましょう。「経営」です。ただこれは『ティール組織』でも詳細に書いていますからここで多くは語りません。

 1つ目のヒエラルキーの観点から理解している人にとっての経営とは、非常に明確です。それは上にいる人が下にいる人に、どのように仕事をさせるのか。経営とは、いくつもの明確なプロセスをつくり、それを実行させることです。そして欧州では、今でもなお、多くの政府機関がこのような方針で運営されています。大学だって同じです。学長がいて、ベテラン教授がいて、その下に10年級の教授がいて、講師がいて、修士学生がいて……。

 2つ目の機械の観点から経営を見ると、全く別の世界が広がります。ここでは1つ目の社会のように物事は固定化されてはいません。どんどんイノベーションが起こって、競争環境が刻々と変わっていく。その中でいかに生産性を高めて、環境に最適化していくのか。すべての物事がインプットとアウトプットの観点で動く機械的な世界です。この世界では人間だって資源の1つでしかありません。だから働く人のことを「人的資源」と言うんです。

 2つ目の機械の世界もロジックは非常に単純です。あるレバーを引けば、それに関連したモノが動く。人間だって、より魅力的なボーナス制度・評価制度を作れば、シンプルにやる気を出して働くと思われてきました。

 この機械の世界になって初めて、専門家やコンサルタントも登場しました。彼らに相談すれば、最も少ないインプットで最大限のアウトプットを出せる最適化、合理化が分かる。効率的なイノベーションの起こし方も教えてくれます。そしてまさにこれこそが、私たちの知っている経営なのです。

 けれど、私が本に書いた、今出現しつつある3つ目の新しい社会では、組織はそれ自体が命を持った生命体と考えられます。そしてこの世界では、Aというスイッチを押せば、A’が動く、という単純なロジックは通用しません。

 人間がより良い仕事をするには、ひらめきが生まれるような条件や環境を整えなければなりません。この詳細については、『ティール組織』でまとめています。ぜひ、読んでください(笑)。

 私が伝えたいのは、この3つ目のような経営方針で運営される組織が少しずつ増えている、ということです。固定化した階級組織ではなく、エンジニアが機械をいじるように経営する組織でもなく、人間が自由に、自分で自分のことを管理できる組織。自分がより自分らしい人間でいられる組織、とも言えます。

 こういう組織では、誰一人として「業績だ、業績だ」と言っている人はいません。それなのに、2つ目の機械的な組織よりもはるかに業績がいいんです。

 3つ目の世界の組織が極めて生産性が高いということは『ティール組織』の中でも書きました。けれど、2つ目の価値観で働く人が、3つ目の世界にあるような経営をしようとしても、不可能です。なぜなら、3つ目の世界のモノの見方ができていないからです。

 経営という観点から見ても、1、2、3ではそれぞれ違いますよね。ほかの分野の例でも紹介しましょう。例えば、教育です。

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