「新しい世界」に身を置かないと、モノの見え方は変わらない

 多くの人が、これまで社会がどのように変わってきたのかという流れを理解しています。大きな跳躍があるたびに、社会構造やテクノロジー、政治や社会統治のあり方が変わってきたという事実も分かっている。

 ただ人間は、その跳躍の最中に、変化を理解しているわけではないんです。それぞれの進化の途上で、私たちの世界に対する見方は変わっています。けれど、その事実に自覚的かというと、決してそういうわけではありません。

 ちょうど、水の中にいる魚が、「自分たちは水中で生きている」と気づかないのと同じなんです。それが今回の話のテーマです。つまり人間はその時々、自分の属する時代に合った視点からしか、物事を理解しようとしないんです。

 それぞれの時代で、私たちが世界をどのように理解し、行動してきたのか。今回は論点を分かりやすくするために、人間の進化を3つのステージに分けて解説しましょう。

 1つ目のステージは農耕社会です。農業の発明によって、人間は狩猟社会の部族的な社会から大きく変容しました。農耕文明の時代から私たちが引き継いでいる世界観と言えば、ヒエラルキーでしょう。農耕社会になり、権力の集中が進みました。そしてすべてのことに階層があると見るようになったのです。

 農耕文明は世界各地で発生しましたが、共通するのは必ず身分制があることです。当時の社会では、それが当たり前でした。社会はヒエラルキー化されていて、人間は誰しも生まれたときから身分がある。この時代に生まれた人は、誰もそれを疑わず、当たり前のルールとしてヒエラルキーを受け入れていました。

 2つ目のステージが産業革命後の工業社会。科学や産業の進化が、農耕社会を根底から覆しました。農耕社会では、神によって作られたヒエラルキーがありました。

 けれど工業社会では神もヒエラルキーもありません。そこにあるのは非常に複雑な仕組みだけです。工業社会では、世界がどんなメカニズムで動いているのかが分かれば、それを自分の利益になるように働かせることができます。イノベーションや最適化が、「もっと、もっと」とひたすら続く世界です。工業社会では、すべてが階層ではなく、機械化されていきます。

 3つ目のステージが、今出現しつつある新しい社会です。ここでは、すべての物事を複雑な生態として見ています。

次ページ 人間さえ機械の一部となる現代社会

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