2018年1月に日本語訳『ティール組織』が発売されて以降、日本国内ではこのティール組織が「次世代の組織モデル」として注目を集めています。そもそもティール組織とはどんなものなのか。なぜ、従来の「管理型組織」では駄目なのか。ティールをはじめとする非管理型の組織マネジメントを実践するには何が必要なのか。そして本当に日本企業の中で根付かせることができるのか。最近ではティール組織を実践したものの失敗したケースなども出ているようです。読者とともに、『個』が輝く新しい組織づくりについて理解を深めていきます。

日本国内でのティール組織の盛り上がりを受け、2019年9月には『ティール組織』を執筆した著者のフレデリック・ラルー氏が来日。東京工業大学で2日にわたって、講演などを実施した。『ティール組織』は世界で50万部発売されており、日本だけでも8万部に到達。マッキンゼーのコンサルタントとして活躍していたラルー氏が、探究の旅路の中で発見したのがティール組織だった。

今回は、本書日本語版の解説を担当した東工大リーダーシップ教育院の嘉村賢洲准教授がラルー氏の講演などを企画。2019年9月13日に、東工大の学生らに向けて講演した内容を紹介しよう。

■関連記事
[報告]ティール型を志向したら、ゴールが見えなくなった
[報告]ヤッホーの井手社長に聞くティール組織の作り方
[報告]オープン編集会議「結局、ティール組織ってどんなもの?」
[議論]権力者とそれ以外に分ける組織は病む?
[募集]ティールってなに? 非管理型組織のススメ

(※コメントの投稿は有料会員限定です)
ティール組織の提唱者、フレデリック・ラルー氏。写真は9月14日に開催されたイベント「ティール・ジャーニー・キャンパス」の模様(写真:竹井 俊晴)
ティール組織の提唱者、フレデリック・ラルー氏。写真は9月14日に開催されたイベント「ティール・ジャーニー・キャンパス」の模様(写真:竹井 俊晴)

 今回、最初に頂いた依頼は、『ティール組織』に書いてあることよりもっと幅の広いことを話してください、ということでした。新しい組織の出現よりさらに大きなことを話せ、と。最初は戸惑いましたが、少しでも皆さんの将来に光を差すことができればと思っています。

 もともと私はベルギー生まれで、この3年くらいは米国に住んでいます。欧米では今、多くの混乱が起こっています。社会がこの先、どうなるのか。そしてどんな価値観がこの先、大切にされるのか。誰も未来を見通せなくなっているからです。

 米国ではあんな大統領が選ばれてしまいました。そして「米国をもう一度偉大な国に戻そう!」と歴史を逆行させようとしています。英国でも、欧州連合(EU)からの離脱に向けた準備が進んでいます。「我々は大英帝国である」と、やはりノスタルジーに浸っているように見えます。そして日本でも、憲法改正を巡る議論があると聞いています。

 どうやら世界は混乱を深め、そしてかつての古き良き時代に戻りたいと考える人が増えているようです。まずはここからスタートしましょう。

 哲学者や社会学者、文化人類学者、心理学者など、さまざまな研究者が、人間の進化の過程を分析し、人間は少しずつ進化をするものではない、ということを発見しています。

 つまり人類はあるとき、飛躍的な進化を遂げる。つまり大きなジャンプをして、進化を遂げてきました。歴史を振り返ると、20人の集団で暮らす時代が長く続きました。けれどあるとき、この小集団が一気に大集団へと変わった。大きな跳躍を遂げたわけです。ここから、人類にとって最も大きな跳躍である農耕社会が始まりました。

 2回目の跳躍は産業革命や情報革命です。科学と産業が近代を築いてきました。そして今、3回目の大きな跳躍が進みつつあります。これを「脱近代」と呼ぶ人もいます。まさに今、世界中の多くの人が、人類の新しい跳躍を始めるかどうかの瀬戸際にいるわけです。

次ページ 「新しい世界」に身を置かないと、モノの見え方は変わらない

この記事は会員登録でコメントをご覧いただけます

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題