1日1問の課題に向き合い、考える癖をつけましょう。アビームコンサルティング、エイベックス、AGC、キリンホールディングス、凸版印刷、日本生命保険、ライオンの7社が、毎日1問、100日で計100問の課題を出題し、各社の強みを伝授します。読者はコメント機能を使ってその議論に参加できます。営業力や発想力、ヒット商品の作り方──。この連載を通して、明日からビジネスの現場で使える知識や考え方を学びましょう。

 若手社員100日養成塾もいよいよラスト1週間を迎えた。最後の養成テーマは「企業ブランディング」。企業をいかにブランディングしていくかをキリンホールディングス(HD)から学ぶ。

 今回、メンターを務めるのはキリンHDブランド戦略部の岩永綾乃氏。同社は今年、企業のスローガン「よろこびがつなぐ世界へ」を作成したり、同社のシンボル「聖獣麒麟」を盛り込んだ企業ロゴ刷新をしたりしており、岩永さんは作成に深く携わった1人だ。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 まず、企業ブランディングとは何のためにあるのか。キリンHDの場合、岩永さんは「キリンの商品を買おうとする気持ちの底上げにつなげてもらいたい」と解説する。商品と違って企業そのものは直接的に顧客の求めるものやサービスを提供するわけではないなか、企業ブランディングを通じて「キリンHDという企業を好きになってもらう」ことがポイントだという。例えば人を好きになる場合、「生き生きと仕事をしている人が好き」というだけでなく、「何を思ったり、考えたりしているのか」という点がわかることでより魅力を感じる。企業も同様に自社の理念やミッションを伝えることで、より好きになってもらうことを目指すわけだ。

 その企業の理念を伝える手段の一つとして、スローガンがある。実はキリンHDには長くスローガンがなかった。コーポレートスローガンは企業の存在意義を社内外に宣言するもの。「幅広い商品があるキリンHDに一本軸を持たせる」(岩永さん)ことがスローガンを通じて可能になるという。

 そのため「社員たちの考え方の根底にある何かを見つけ出す」作業が必要になる。「よろこびがつなぐ世界へ」が生まれるまでも、社内外へのインタビューなどを重ねたという。当初は「健やか」といったキーワードも出たが、「健康が最終目的でなく、健やかだからこそ得られるその先のもの」を考えていくなどした結果、「よろこび」や「つなぐ」、「世界」といったキーワードが浮かび上がってきた。

 伝える手法も様々だ。例えば、キリンHDのCM「ドレミファMovie」は、商品を前面に打ち出している印象は受けない。様々な年代の人々が「ドレミファ」と発声することで、「よろこびの発露」を表現し、「よろこびがつなぐ世界へ」を掲げるキリンHDのイメージを映像として持ってもらうのだという。
また企業のもつ「資産」に着目するのも手段だ。おめでたいしるしともされる伝説上の動物、「聖獣麒麟」。岩永さんが多くの人が商品などを通じて目にしたことがあるであろう聖獣麒麟に再注目してイメージ調査したことが、企業ロゴ刷新につながったのだ。

 100日養成塾のラスト6日間を通じ、どのように企業ブランディングをしていくか。岩永さんが取った戦略を知りつつ、学んでほしい。

メンターからのコメント

岩永綾乃
キリンホールディングス ブランド戦略部

「キリン」と聞いて皆さんはどんなことを思い浮かべますか? 一番搾り、キリンレモンなどの商品ブランドでしょうか。サッカーの応援や、知り合いのキリン社員を挙げる方もいるかもしれません。それらすべてが企業としてのキリンブランドです。

商品だけでなく、その背景にある企業の姿勢や思いに共感することが、企業の社会での存在意義を認め、商品選択にもつながる今の時代、企業ブランディングの重要性はますます高まっています。

今回はこの「企業ブランディング」について考えていただきます。あまり難しく考えず、こんな企業だったら好きだな~という発想で、ぜひ活発な議論をお願いいたします!

次ページ ケーススタディー「あなたならどうキリンをブランディングする?」

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