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1日1問の課題に向き合い、考える癖をつけましょう。アビームコンサルティング、エイベックス、AGC、キリンホールディングス、凸版印刷、日本生命保険、ライオンの7社が、毎日1問、100日で計100問の課題を出題し、各社の強みを伝授します。読者はコメント機能を使ってその議論に参加できます。営業力や発想力、ヒット商品の作り方──。この連載を通して、明日からビジネスの現場で使える知識や考え方を学びましょう。

 UXデザインという言葉を知っているだろうか? UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略語。ユーザー体験と訳される言葉で、近年、注目を集めている。100日養成塾の第8回は、ライオンから講師を迎え、UXデザインを通じて発想力を磨いていく。

(写真:PIXTA)

 UXデザインとは、その名の通り「ユーザーの体験」に重きを置く考え方で、企画段階から、ユーザーにとって理想的な体験を目標にして具体的な製品やサービスをデザインしていくことを言う。ここでいう体験とは、ユーザーが製品と接する前から実際に購入して使う、さらには使い終わるまでの全てを指すことが多い。

 なぜ、UXデザインが注目を集めているのか。これまで、売れる仕組みを作るには「4P」から考えるのが一般的だった。プロダクト=製品、プライス=価格、プロモーション=販売促進、プレイス=流通経路の頭文字を取ったものだ。ところが、ネット時代になって、ここにもう一つの要素が加わった。それが「体験」だ。Experienceの「P」を取って「5P」と呼ぶこともある(5つ目のPにPeopleやPackageを加えて5Pとする考え方もある)。

 特に重要視されているのはインターネットサービスの領域だ。気鋭のデザインエンジニアであるTakramの田川欣哉代表は本誌連載のなかでこう語っている。

 「5つのPをフルセットで考えられるかどうかで、ビジネスのパフォーマンスが決定的に変わる。米アマゾン・ドット・コムや米ネットフリックス、米エアビーアンドビーを見ていると、4P型ではなく全て5P型。米アップルも米グーグルもそうです。しかも、エクスペリエンス設計を上位に置いている。ネットサービスは家電など一度買ったらそうそう買い替えられないものと違って簡単に乗り換えられるので、使い勝手が悪いとすぐ競合サービスに移ってしまう。だからこそ体験を重視しているのです」(デザインを経営に生かす~Takram田川欣哉氏の集中講座

 では、なぜネット企業ではないライオンもUXデザインを重視しているのか。

 そこにUXが注目されるもう一つの理由がある。企業の競争環境が激化するなかで、製品やサービスを機能だけで差異化することが難しくなってきた。似たような機能を持つ製品が多く並ぶ中で、消費者が機能以外を重視して製品を選ぶ時代だ。そこで様々な分野で「顧客がこの製品、サービスとどのように出会い、どんな使い方をしてどう使い終わるのか」という体験をデザインすることが重要になってきた。

 ライオンが主戦場としている日用品はまさにそうしたマーケットの一つ。機能訴求だけでは売り上げは頭打ちで、消費者もどの商品を買っていいかよく分からない。そこで同社は、2017年に生活者行動研究所をコンシューマーナレッジセンターに改組し、センター内に「UXデザインチーム」を置いた。社内の新規事業支援として、企画段階から事業部門と協業し、ユーザーの調査や観察に基づいて実際に商品のデザインまで関わる。

 例えば、同チームが関わって京セラと開発中の歯ブラシ「Possi」は、「子どもを虫歯にさせたくないが、子どもは歯磨きを嫌がって仕上げ磨きをさせてくれない」という困りごとを解決するために生まれたもの。スマートフォンなどとPossiをつないでスマホで曲を再生すると、ブラシの振動による骨伝導で、磨いている間だけ音楽が聞こえる仕組みを持つ。全く新しい機能の採用ではなく、困りごとやニーズを起点として開発を進めている。