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 人生100年時代。テクノロジーの進化や社会の劇的な変化、終身雇用と年功序列の崩壊に伴い、私たちはこの先、「同じ仕事だけを続けていく」ことが難しくなる。それを解消するのが「プロティアン・キャリア」だ。社会や職場の変化に応じて柔軟にキャリアを変えていく、言い換えれば「変幻自在なキャリア」を意味する。

 そんな「プロティアン・キャリア」になる実践方法をまとめたのが『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(日経BP)だ。人生100年時代、どんな環境になったとしても生き生きと働き続けるために、私たちは今どんなキャリアを形成していくべきなのか。

 今回はプロティアンなキャリアを実践する伊藤羊一氏と対談。伊藤氏は、日本興業銀行から文具・オフィス家具メーカーのプラスに転じ、現在はYahoo!アカデミアの学長を務めている。また『1分で話せ』や『0秒で動け』(ともにSBクリエイティブ)という2冊のベストセラーの著者でもある。対談の前編では伊藤氏がこれまでどのような形でキャリアの決断を下してきたのかを聞いた([議論]キャリアの分岐点、迷ったら「直感」で決めていい?)。後編で伊藤氏は、好奇心旺盛な今のキャラクターを後天的に身につけたことを告白。人間はいくつからでも変われると語った。

法政大学キャリアデザイン学部のタナケン先生こと田中研之輔教授(写真右)と、『1分で話せ』『0秒で動け』著者の伊藤羊一さん(写真/竹井俊晴、ほかも同じ)

田中教授(以下、田中):羊一さんが『0秒で動け』を書くときにイメージしていた読者はどのような世代ですか。

伊藤氏(以下、伊藤):まず20代に対しては「ハードに働こう」「悩むより修羅場をくぐろう」という思いでいます。そうやって動いていると、経験が蓄積されて、悩む人が出てくるわけです。「あれ? これでいいんだっけ」と。『0秒で動け』は、それくらいの世代に対して、どう鍛えていこうかということを伝えたつもりです。そういう意味では『プロティアン』がターゲットとする30〜40代のビジネスパーソンと近いのかもしれません。

 タナケンも、『プロティアン』で触れていましたが、僕も『ライフ・シフト』にかなり影響を受けたんです。僕のキャリアは結果として、今のようになっていますが、『ライフ・シフト』を読んで随分と励まされたんですね。状況に応じて変幻する、という考え方に共感を覚えたんです。

 人生100年時代に、70歳や80歳まで仕事をする上では、1本のキャリアではもう無理である。それにどうやったらみんなが気づくのか。そこは今なお、悩ましいですよね。

田中: 80代まで現役で働き続けるキャリアモデルは歴史的にもこれまでありませんでした。けれど、これからはあらゆるビジネスパーソンが70歳とか75歳くらいまで働き続ける時代になります。現行制度のまま55歳で役職定年になったとしても、そこから15年もの時間があるわけです。

伊藤:企業の寿命よりも、個人のキャリアの方が長くなっていく。そうなると1社に勤め続けるのは物理的にも不可能です。その事実に早く気づいて、新しいスキルを構築すべく挑戦してもらいたいですよね。結局は、自分が楽しいと思える方向に進んでいくのが一番ですから。