人生100年時代。ビジネスパーソンが「現役」として働き続ける時間はかつてよりも、ぐんと長くなっている。テクノロジーの進化や社会の劇的な変化、終身雇用と年功序列の崩壊に伴い、私たちはこの先、「同じ仕事だけを続けていく」ことが難しくなる。

 その難しさを解消するのが「プロティアン・キャリア」だ。プロティアンとは、ギリシャ神話に出てくる、思いのままに姿を変える神・プロテウスのこと。そこから転じて、「プロティアン・キャリア」とは社会や職場の変化に応じて柔軟にキャリアを変えていく、言い換えれば「変幻自在なキャリア」を意味する。そんな働き方ができれば、どんなに社会環境が変わろうとあなたは生き生きと「現役」を続けられる。


 そんな「プロティアン・キャリア」を実践するための理論をまとめたのが『プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』-(日経BP)。人生100年時代、どんな環境になったとしても生き生きと働き続けるために、私たちは今どんなキャリアを形成していくべきなのか。

 今回はこの夏、ほぼ同じタイミングで「これからのキャリア」をテーマにした『転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方』(扶桑社)をまとめた著者のmoto氏が、タナケンゼミを訪問。次世代のキャリア構築術について、motoさんとタナケン先生が対談した。本記事では対談の後編を掲載する(前編はこちら)。

法政大学のキャリアデザイン学部のタナケン先生こと田中研之輔教授(写真右)と、『転職と副業のかけ算』著者のmotoさん(写真/竹井俊晴、ほかも同じ)
法政大学のキャリアデザイン学部のタナケン先生こと田中研之輔教授(写真右)と、『転職と副業のかけ算』著者のmotoさん(写真/竹井俊晴、ほかも同じ)

田中氏(以下、田中):motoさんはSNSやブログ(「転職アンテナ」)などで、働き方について情報を発信し、その考えをまとめた著書『転職と副業のかけ算』を発売されました。この本の中でも、ご自身のキャリア戦略について詳細に説明しています。

 改めて具体的に説明すると、短大卒業後、20歳の新卒で地方のホームセンターに入ったときのmotoさんの年収は240万円。それが転職を重ねて、22歳で330万円、23歳で540万円、27歳で900万円(うち副業200万円)、30歳で5000万円(うち副業4000万円)と、まるでわらしべ長者のように稼ぎを増やしています。

 最初にホームセンターに就職した頃から、自分でキャリアをつくっていくんだと思っていたんですか。

moto氏(以下、moto):僕が高校生のときに、ライブドア時代のホリエモンが注目を集めていました。フジテレビを買収しようとしたりしていて、その様子を見ていて、「若くしてこんなに世の中やお金を動かしているのはカッコイイな」と純粋に思ったんですね。

 どうしたら彼のようになれるんだろう、というところから考え始めました。その頃、20代で1000万円稼げるのはIT業界か外資系企業しかなくて、ITベンチャーに高い年収でヘッドハンティングされるにはどうすればいいのか、みたいなことを逆算して考え始めたのが発端でした。

 そこでまず「30代で1000万円」という目標を掲げて、そこに至るまでのマイルストーンを考えたわけです。年齢と年収の目標をつくって、25歳700万円、30代1000万円、みたいに。今のところ50歳までマイルストーンを設定しています(笑)。

 ただ、一番影響を受けたホリエモンが、事件後には一気に輝きを失ってしまい、会社も窮地に立たされました。あの光景を見たときに「世の中に安定なんてないんだな」と思いました。同時に、会社はダメになっても、個人として活躍しているホリエモンのすごさも感じました。

田中:「会社にキャリアを預ける」という一時的な居心地の良さが、安定という錯覚を生むのかもしれません。そして人間は今いる環境に適応して、考え方もその集団に染まっていく。つまり「自分はこれでいい。これを続けていけばいいんだ」と思い込むようになるわけです。

 マズイのはその思考に染まって、気づけば「それしかできない」状況になってしまうことです。組織に自分のキャリアを預けて依存して、抜け出せなくなる。それが一番危険なことです。

moto:究極的には「会社にいるだけ」でも毎月同じ日に、給料は振り込まれるんですよね。ここに安心して、依存してしまうのは非常に危険だと思います。

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