世界的にヒットし、日本でも35万部のベストセラーとなった、リンダ・グラットンら著『LIFE SHIFT』(東洋経済新報社)でも、キャリアを拘束してしまう家のような有形資産より、無形資産を蓄積することが大切であるとされている。

 では、それらをどうやってためていけばいいのか。分かるようにまとめたのが、このキャリア版バランスシートなのだ。

 キャリアを「資本」として考えるメリットは、2つある。

 1つ目は、蓄積した資本を転換できること。例えば、お金があれば服が買えるように、資本として貯めたキャリアを資産にすれば転換することができるようになる。

 2つ目は、蓄積した資本を分析できるようになること。従来型のキャリア論では、A社からB社に転職すると、履歴書にはその職歴だけが残っていく。つまり単なる「移動」に留まり、その人の中に何がたまったのかが分からないままだ。

 ただ本当に大事なのは「移動した」という事実ではなく、前職でどんな資本をためてきたのかということだろう。この「キャリア資本論」では、それを整理・分析できるようになる。

キャリア資本論を構成する3つ

 キャリア資本論は、以下の3つの分類から成り立っている。

 1つ目は、ビジネス資本。これは言葉からも分かるように、働くことで蓄積されてきた資本を指す。法人営業ができる、デザインができる、などがそれに当たる。

 2つ目は、社会関係資本。言葉からは少々分かりづらいかもしれないが、次のようなものが蓄積項目の例となる。

 社会関係資本が貧しい例として挙げられるのは、ずっと1つの会社に人生をささげてきた人の、退職後だろう。

 子供はそれなりに大きくなってもう手がかからない。一方で、仕事はなくなったのに、これまでは会社の中のネットワークだけで生きてきたから、そのつながりが切れた途端に、人間関係がゼロになる。地域の活動にもほとんど関わらずに生活をしてきたから、地元のコミュニティーに入ることもできず、家でただただぼーっと過ごす。

 退職後にそんな毎日を送らないためにも、早い段階から、社会関係資本は、戦略的に蓄積していかなければならない。

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