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大事なのは給料ではなくて、自分の稼ぎ

伝統的キャリアと「プロティアン・キャリア」
伝統的キャリアプロティアン・キャリア
キャリアの所有者組織個人
価値観昇進、権力自由、成長
移動の程度低い高い
成果地位、給料心理的成功
姿勢組織的なコミットメント仕事満足感
専門的コミットメント
アイデンティティー 組織から尊敬されているかということ
=他人からの尊敬
自分は何をすべきかということ
=組織認識
自分を尊敬できるかということ
=自尊心
自分は何がしたいのかということ
=自己認識
アダプタビリティー 組織に関連する柔軟性
=組織内での生き残り
仕事に関連する柔軟性
現行のコンピテンシー
=市場価値
(出典:Hall 2002 p.303 著者訳・部分修正)

 上の表を見れば、伝統的なキャリアと「プロティアン・キャリア」の違いは分かりますよね。伝統的なキャリアモデルでは、稼ぎ方を考える必要はなかった、ということがポイントなのです。

 組織に属して働く場合、個人は自分の稼ぎについて意識をしなくても、毎月給料が支払われます。対して「プロティアン・キャリア」が心理的な成功を重視します、というだけでは、人生100年時代を設計する上で、大きな不安を感じてしまうでしょう。「心理的な成功だけで、食っていけるのか」。そんなふうに率直に感じる人もいるかもしれません。

 伝統的なキャリアでは、仕事の成果として、地位と給料が重視されてきました。けれど、「プロティアン・キャリア」では心理的成功と稼ぎ(個人収益)の両方を意識していく必要があるのです。

 それにもかかわらず、ダグラス・ホール教授はプロティアン・キャリア論の中で、この点を見ていません。

 令和の時代、皆さんの働き方はさらに多様化が進むはずです。それぞれ皆さんが、個人の事情に合わせて働き方を自由に選べるようになっていくはずです。

 転職経験が、それぞれのキャリアを見る中でネガティブに評価される時代は、平成の前半で終わりました。今では、それぞれの人が自分のキャリア形成に合わせて、新たな職場に移り、挑戦するようになっています。

 そしてその時、「心理的成功」と「(組織から与えられる)給料」で判断するのではなく、「心理的成功」と「(自らの収入としての)稼ぎ」を意識していく必要があるのではないでしょうか。

 ここで私が指す「稼ぎ」には、「給料」も含まれます。けれど、ここで必要なのはもっと広い概念です。それが、前回(「成長に必要な3つのキャリア資本、持っていますか?」)、皆さんと一緒に考えた「資産」と「資本」になるわけです。

 そこで私は、リンダ・グラットン教授の無形資産という視点と、社会学者のピエール・ブルデュー教授の資本論をプロティアン・キャリア論に接続させていくことを考えたのです。

 キャリア資本の考え方は、変幻自在に変わることで、何を蓄積しているのかということです。そして、「プロティアン・キャリア」の場合、それを「厚み」ととらえることもできます。

 どのような社会変化に身を置いて、今、どんな資本が足りているか。また、足りていない資本は何なのかを定期的に見直して、この先にどんな資本を拡充させるのかなどを冷静に計画していくようにします。

 資本の蓄積は簡単に実現できるわけではありません。だからこそ、経験を積み重ねながらためていくのです。

 具体的に分かりやすくするために表を用いて解説してみましょう。