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議論のテーマ
「プロティアン・キャリア」を構成する3つの資本の中で、あなたに足りないのは何でしょう? バランスシート(貸借対照表)を活用して整理する方法を伝授します。ぜひ試して、結果や感想を教えてください。

 人生100年時代。ビジネスパーソンが「現役」として働き続ける時間はかつてよりも、ぐんと長くなっている。テクノロジーの進化や社会の劇的な変化、終身雇用と年功序列の崩壊に伴い、私たちはこの先、「同じ仕事だけを続けていく」ことが難しくなる。

 それを解消するのが「プロティアン・キャリア」だ。「プロティアン」とは、ギリシャ神話に出てくる、思いのままに姿を変える神・プロテウスのこと。そこから転じて、「プロティアン・キャリア」とは社会や職場の変化に応じて柔軟にキャリアを変えていく、言い換えれば「変幻自在なキャリア」を意味する。そんな働き方ができれば、どんなに社会環境が変わろうとあなたは生き生きと「現役」を続けられる。

 「プロティアン・キャリア」とは3つの資本で構成される。「文化資本」「社会関係資本」「経済資本」である。ただ、こう並べられても、果たして自分にどんな資本が足りていて、何が充実しているのか、なかなか分かりづらいだろう。そこで連載6回目には、バランスシート(貸借対照表)を活用しながら、自分でチェックできる方法を伝授する。あなたに足りないのはどんな資本だろう。

法政大学のキャリアデザイン学部のタナケン先生こと、田中研之輔教授が「プロティアン・キャリア」の実践方法を伝授する(写真/竹井俊晴、ほかも同じ)

 新時代を迎えましたね! 本ゼミも6回目となり、いよいよ佳境に入ってまいりました。皆さん、プロティアンな日々を過ごしていますか。

 「プロティアン・キャリア」は机上の空論ではありません。ですから、本ゼミで紹介するノウハウなどの中で、「あ、これは生かせるな」と感じたエッセンスは、すぐに日常生活の中で、取り入れていくようにしましょう。私も日々、プロティアンな生き方をアップデートできるように心がけています。

 本ゼミでは、米ボストン大学のダグラス・ホール教授が提唱するプロティアン・キャリア論をベースに、私は、これからの時代を生き抜くためのスキルとして皆さんに解説しています。

 この考え方を身につけ、使いこなすのは、例えば空手の「型」を習得するのに似ています。まずは何度も繰り返すこと。これまでの連載記事も改めて読み直してもらって、そこで気づきがあれば、ぜひとも遠慮せず、コメントを書き込んでください。私が直接、お返事をしていきます。

 知識は、それを使っていることを意識しなくなるほど血肉にした時、初めて身についたと言うことができます。そのためにも、コミュニケーションやフィードバックは欠かせないと思っていますし、少しでも皆さんのお力になりたいとも思っています。

【これまでに掲載した記事一覧】

 これまでの記事を参考にしつつも、本ゼミではさらに内容を進めていきます。研究者は、先人たちの見識を尊重しながらも、それを乗り越えることを職業としています。ですから私も、ダグラス・ホール教授を追いかけているだけでは、研究者としては「失格」になる。

 事実、私は「プロティアン・キャリア」についての研究を進める中で、ダグラス・ホール教授の議論に、1つだけ強い不満を感じるようになっていました。それは、ダグラス・ホール教授が「プロティアン・キャリア」について個人に向け多くの提示をしているけれど、「キャリアと稼ぎ方の関係」については、ほとんど述べていないということです。

 人々が、自分で主体的に、キャリアを形成していくことには大いに賛成です。しかし私は、「稼ぎよりも、働く意味」を過剰に重視し、内面の達成である心理的成功だけに重きを置くダグラス・ホール教授の見解に、物足りなさを感じています。

 「プロティアン・キャリア」を形成することと、その結果として、お金を稼ぐことは、決して矛盾しません。

 キャリアについて語るのに、なぜ、稼ぎ方について語らないのか。そこが納得できないのです。

 とはいえ、この批判をダグラス・ホール教授に押し付けるのはフェアではありません。なぜなら、これまでのキャリア論の系譜を振り返ってみると、どんなものも、「稼ぎ方」までは踏み込んでいなかったのです。

 ここで改めて、伝統的なキャリアと、「プロティアン・キャリア」の違いを改めて整理してみます。