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議論のテーマ
「プロティアン・キャリア」に必須の3つの資本、ありますか? 記事中にチェックシートを用意しています。ぜひ試して、結果や感想を教えてください。

 人生100年時代。ビジネスパーソンが「現役」として働き続ける時間はかつてよりも、ぐんと長くなっている。テクノロジーの進化や社会の劇的な変化、終身雇用と年功序列の崩壊に伴い、私たちはこの先、「同じ仕事だけを続けていく」ことが難しくなる。

 それを解消するのが「プロティアン・キャリア」だ。「プロティアン」とは、ギリシャ神話に出てくる、思いのままに姿を変える神・プロテウスのこと。そこから転じて、「プロティアン・キャリア」とは社会や職場の変化に応じて柔軟にキャリアを変えていく、言い換えれば「変幻自在なキャリア」を意味する。そんな働き方ができれば、どんなに社会環境が変わろうとあなたは生き生きと「現役」を続けられる。

 「プロティアン・キャリア」とは3つの資本で構成される。「文化資本」「社会関係資本」「経済資本」である。連載5回目では自分が3つの資本をどう構成しているのか分かるようなチェックできるシートを用意した。まずは、あなたのキャリアを棚卸しすることからスタートしよう。

法政大学のキャリアデザイン学部のタナケン先生こと、田中研之輔教授が「プロティアン・キャリア」の実践方法を伝授する(写真/竹井俊晴、ほかも同じ)

 本ゼミは5回目に突入しました。皆さんはもう、「プロティアン・キャリア」の基礎的な部分は理解してくださったのではないでしょうか。そこで少しずつ、より具体的なシーンでの実践方法に踏み込んでいくことにします。

 まずはその前に、プロティアン・キャリア論のポイントをおさらいしておきます。

 「プロティアン・キャリア」では、1つの組織にキャリアを預けるのではなく、自分のキャリア形成を軸に、「働くこと」や「生きること」を考えていきます。1社で働き続ける場合や、転職で組織を移る場合、副業などによって複数の組織に出入りする場合でも、個人のキャリアを軸に考えることに、変わりありません。

 いかなるキャリアの選択時にも、「プロティアン・キャリア」では自分だけよければいいという独りよがりな判断を下すのではなく、職場や家庭、地域などとの関わりやバランスを大切にする、「関係論的な視座」を大切にしなくてはなりません。

 その上で、「私が何を大切にして、どのように働き、どう生きていきたいのか」というアイデンティティー、また「社会や組織の変化に自ら対応していく」というアダプタビリティーが問われることを前回、確認しました(「『自分らしく働き続ける』ために必要な能力は?」)。

 では皆さん、これで大丈夫ですね。アイデンティティーとアダプタビリティーを軸にして、「プロティアン・キャリア」を形成していきましょう! とゼミを完結するわけにはいきません。

 というのも、人生100年時代に働く私たちのキャリア形成は、これまで先人たちが経験してきたキャリアとは比較できないほど、長く、かつ複雑なものになるからです。

 それはたとえ「働き方改革」によって、1日や1カ月の労働時間が短くなっても変わりません。なぜならそれでも私たちは、70歳を超えても「現役」として働くことが珍しくないほどに、圧倒的に長い年月、働き続けなくてはならないからです。

 このような長く働き続けることになる新時代には、1社だけに勤め続ける組織内の単線的なキャリアモデルは通用しません。様々な組織を行き来し、業界の境界を越えていくようならせん的なキャリアモデルが必須になります。

 このらせん的なキャリアモデルでは、時に年収が下がったとしても、新たな業界へ飛び込み、キャリアを形成していく。そこからレバレッジを効かせて再び花を咲かせていくように、山も谷も受け入れながらキャリア形成していくのです。

 「常に変化しましょう、適応しましょう」というのは、理想論では理解できます。けれど、それだと疲れませんか。変化を楽しめる人なら問題ないのでしょうが、世の中は、決してそんなタイプの人ばかりではありません。

 そこで私は「プロティアン・キャリア」を実践していく上で、「変化し、適応すること」を自分で把握すること、さらに自分で計画的に実行するために、「資本」の概念をプロティアン・キャリア論の中に接合させることを考えています。

 これを私は、「プロティアン・キャリアキャピタル」と定義したいと思います。