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適応力を問われる「転職」、あなたは変われるか?

 繰り返しますが、アイデンティティーとは「何を大切にして自分らしく働くのか」というあなた自身が考える働き方の心得に通じるもののこと。一方でアダプタビリティーは「社会や組織の変化に対して適応させていく」という働き方の姿勢を指します。

 変化に適応するには、あなた自身が変わらなければなりません。人生100年時代を迎え、労働期間が長くなる時代、変化に適応するアダプタビリティーは必須の能力です。変化から目を背けてアイデンティティーを固持しようとする状態は、「プロティアン・キャリア」を形成しているとは言えません。

 そして、アダプタビリティーが求められる最も代表的な例が転職です。

 1つの組織で働き続け、定年を迎える人は今では少なくなりました。たとえ1つの組織で定年まで働いたとしても、その後で違う職場に勤めるかもしれません。また職種が同じでも、職場が変われば働き方は変わります。異なる職種や業界に転職するとなると、さらに変化は大きくなるはずです。

 そこで問われるのが、変化に柔軟に対応するあなたのアダプタビリティーなのです。

  • ・新しい職場の働き方に、自分自身の働き方を適応させる
  • ・これまでのキャリア実績にあぐらをかくことなく、変幻自在に進化させる

 アイデンティティーが自分の内側にある大切にすべきコアな部分なのに対して、アダプタビリティーは取り巻く外的な環境にあなたを適応させる行為です。あなた自身を新たな職場や市場に応じて変幻させていくこと、とも言えるでしょう。

 「プロティアン・キャリア」の形成では、この適応能力がとても重要な役割を担っています。

 このアダプタビリティーについて本ゼミで議論し始めると、あまりに多様なケースがあるので論点が拡散してしまいます。そのため今回は「プロティアン・キャリア」の形成、つまり個人がキャリアを形成する上で重視すべきことは何かに絞って考えましょう。

 大切なのは、アダプタビリティーが求められた場面で、あなたがどうキャリアを形成してきたのか。それを振り返ることです。これから転職を考えている人は、どのようにキャリアを形成していくのかを計画することが欠かせません。

 そしてアダプタビリティーが求められている時こそ、あなたの「キャリア・キャピタル(資本)」は蓄積されているのです。

 キャリア・キャピタルとは、「文化資本(仕事で得られる専門技能や知識などを含む資本)」「社会関係資本」「経済資本」の3つを合わせたもののこと。この考え方は、ダグラス・ホール教授のプロティアン・キャリア論に、フランスの哲学者・社会学者のピエール・ブルデュー教授が提唱する「多元的資本論」を接合させたもの。

 それをタナケンゼミでは、「プロティアン・キャリアキャピタル」と呼びます。そして、このプロティアン・キャリアキャピタル理論を実践すれば、精神的な豊かさと経済的な豊かさの両方を獲得し、文字通り、人生100年時代を豊かに過ごすことができるのです。

 果たしてあなたは、「文化資本(仕事で得られる専門技能や知識などを含む資本)」「社会関係資本」「経済資本」から成る「プロティアン・キャリアキャピタル」をどんなバランスで構築していますか。そして、「プロティアン・キャリア」を実践するために必須となるアイデンティティーとアダプタビリティー、どのくらい培っていますか。是非、あなたの考えを教えてください。私もお返事をします。

 次回は、ダグラス・ホール教授が提唱したプロティアン・キャリア論を発展させた、私独自の理論についてさらに詳細に解説していきます。