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3日間缶詰になってアイデアを練り直した

山崎氏:先ほどご説明したジョブカタログの中には仕事の詳細な内容とその対価が明記されています。ワーカーも実際にこのカタログを見てエントリーする。つまり並んだカタログをざっと見て、「あ、この内容は私には無理だ」と判断した人は登録すらしていないんですね。つまり、このカタログを並べていることが質の高さにも貢献していると考えています。

カタログは最初のアイデア段階で既に盛り込まれていたのですか?

熊谷直樹氏
大手外資系コンサルティングファームを経て、2014年にリクルートテクノロジーズに中途入社し、業務企画、システム開発ディレクションを担当。副業したい人材と企業をマッチングするサービス「BizGROWTH」の事業責任者を務める。

熊谷直樹・リクルート次世代事業開発室(以下、熊谷氏):いや、実はこのサービスの内容は非常に紆余曲折(うよきょくせつ)があります。一度全く別のモデルで実証実験として半年間トライしたんです。もっと労働集約型の提案でした。半年たって、会社の判断としては「面白みに欠ける」と。ただ、「集まっているメンバーは面白いから、もう半年やってみたら」と。

 そこで、労働集約型ではないウェブのマッチングサービスに変更して、最新のテクノロジーを使ったマッチングはできないかという検討をしました。その検討で2〜3カ月がたち、残された期間も残り少なくなっていました。

危機感があった?

熊谷氏:危機感はずっとありました。求められている期待値は大きく、ニーズがあることも分かっている。でも、なかなかうまいモデルが思いつかない。そこで、一緒に検討していた4人で3日間ほど缶詰めになってロングミーティングをしたんです。1日6時間くらい掛けてホワイトボードの前でずっとうなりながら考えていました。

 そこでカタログのアイデアが出てきたんです。最初はほんとにタスクを箇条書きにしただけのものでした。それを持ってクライアントを回ったら、「あーコレとコレとコレが足りない」って丸を付けてくれた。「結構いけるんじゃないか」って言いながらどんどん改良していきました。

カタログを思いついた時は盛り上がったんですか?「コレだ!」という確信があった?

山崎氏:「コレだ」とうなづいたメンバーもいれば、そうでなかったメンバーもいましたね。

満場一致ではなかったんですね。

熊谷氏:何でもそうだと思うんですが、生まれたてのアイデアってすごく軟らかい状態なのでいくらでも論破できるんですよ。でも誰かが「こういう理由だから」と強く言うとそちらに傾くというか。アイデアが生まれる瞬間ってそれくらいどちらにでも振れる状態だと思います。

「コレはいいね」「でも違う」という展開が何度もあったのだと思います。では、なぜカタログのときは「じゃあ一度やってみよう」という流れになったのでしょう?

熊谷氏:それは、僕らの中の何人かの頭に「ある程度は売れる」というイメージができたのだと思います。論理じゃなくて、イメージでしかありません。でも、その「売れそう」というボーダーラインを越えないアイデアは「やっても無駄だよね」としてボツになる。カタログはこの閾値(しきいち)を越えていたんですね、きっと。

サービス化から10カ月が経過しました。現在の状況を教えてください。

山崎氏:クライアントの数も目標値を上回っていますが、ワーカーからの反響が大きいですね。そこまで多額のウェブ広告を投じているわけではないのですが、予想を大きく超える人数が登録しています。副業に対するニーズは相当大きいというのが実感です。

今後の課題は。

熊谷氏:先ほどのエリクラの話とも重なるのですが、「副業人材を使う」という意識がまだ浸透していない企業が相当数あります。ただ、困っていることはたくさんあって、我々がメニューの一覧を持っていって営業をかけるとすぐに依頼をいただけるケースも多いんですね。これを営業を掛けずにどうウェブでのマッチングに持っていくか。我々としては過渡期だと考えていて、「ウェブを使って副業人材に頼もう」という選択肢を持ってもらえるまで啓蒙を続けつつ、営業もある程度続けていこうと考えています。