「無駄」を見分ける方法はこれだ
そうした「無駄」を見分ける方法は?
沓水氏:私は「効率化」という言葉は使いません。まずシンプルに「作業に人が介在する価値があるのか」を判断するようにしています。つまり、「その人だから」という価値です。それがないものは全てデジタル化したほうがいい。ゼロにするんです。効率化しようと考えずに、まずは仕事を切り分けることです。実際に見分けるのは難しいですが、私は癖としてそういう見方をするようにしています。
そもそも「シフト管理を楽にする」というアイデアが他社から出てこなかったのが不思議ですが。
沓水氏:似たようなサービスはあります。ただ、それらは勤怠管理や給与計算に重きを置いていて、シフト管理はおまけのような扱いです。なぜかというと、勤怠管理や給与計算は法で定められたもので、これらは「経営」のカテゴリーなんですね。でもシフト管理は法で定められたものがない。勤務時間の上限などはありますが、紙でやろうがアプリでやろうがどんな組み方をするのも自由。つまり「経営」ではなく「運営」のカテゴリーに入るものです。
ビジネスとして、まずは「経営」のカテゴリーから攻めるというのは定石です。絶対に必要だからニーズがある。勤怠管理は必ずしなければならないものなので、顕在化した市場が既にあるわけです。でも、その分、既に競合はたくさんいる。我々はシフト管理に特化して、徹底的に使いやすいサービスを開発しました。
裏を返せば、絶対に必要ではないならその分「価値」を感じないと使ってもらえない。どうやってその価値を訴求したのですか。
沓水氏:「店長もスタッフも楽になる」という1点です。誰かが圧倒的に楽になるわけではないけれども、みんなが使いやすくなることで全体として大きな価値を生めるという点を訴求しています。
ただ、サービスの売り先は個人経営のオーナーです。オーナーへの価値を追求するのが筋では?
沓水氏:2013年くらいからでしょうかね。店長やオーナーにとって「スタッフを大事にすること」の優先度が非常に高まっている実感があったんです。人手不足が顕在化して、新しくアルバイトを採用するのが難しくなっていた。いかに長く働いてもらえるかが彼らにとって大事になってきていました。つまり、店長やオーナーにとっての価値というのは、スタッフが気持ちよく楽に働けることになっていたんです。
なるほど。導入数の推移は?
沓水氏:実数は公表していませんが、サービス開始から1年がたち、二次関数的に導入が増えています。目標値の1.2〜1.3倍で推移しています。このサービスは営業はゼロ。デジタルマーケティングだけで販促しています。最近では「シフト管理」でウェブ検索する人も増えているようです。
今の課題は。
沓水氏:まだまだサービスとして磨けると思っています。確かにAirシフトによってシフト管理は「楽」になりました。でもまだ「楽しい」には至っていない。
シフト管理が楽しい?
沓水氏:はい、その域までいきたいんです。POSシステムが導入されるまで、レジ打ちの担当者は全ての商品の価格を覚えるという職人のような技が必要でした。でもPOSが導入されて誰でもレジ打ちが楽にできるようになった。それだけではなくて、子どもも「ピッ」って商品の価格を読み取るまねをしたじゃないですか。レジ打ちという「単なる作業」が子どもの遊びになった。シフト管理も、子どもにまねされるくらい楽しいものにしていきたいと思っているんです。