「まだまだ無駄はたくさんある」
チャットアプリを使ってシフト管理を効率化する「Airシフト」のアイデアを思いついたきっかけは?
沓水佑樹・リクルートライフスタイル Airシフトサービス責任者(以下、沓水氏):Airシフトは厳密な意味でいう新規事業ではありません。最大の特徴は店長とスタッフがチャットでコミュニケーションを取りながらシフトを完成させていく点にありますが、このチャットアプリ「シフトボード」は2014年に既にBtoC向けのアプリとしてリクルートグループがサービス化していたもの。もともとはチャット機能と、アルバイトのスケジュールを入力すると簡易な給与計算をしてくれる機能しか備えていませんでした。
一方で、企業向けのシフト管理システム「シフオプ」も2011年から事業化していました。この2つを組み合わせたのがAirシフトです。

広告代理店、クリエーティブ系ベンチャー企業を経て2011年に株式会社リクルートに入社。株式会社リクルートジョブズにおいて、シフオプ 、ジョブクイッカーなど複数の新サービス、新規事業の立ち上げに関わり、現在はリクルートライフスタイルにてAirシフトおよびシフトボードのサービス責任者を務める。(写真:吉成大輔)
なぜシフオプを改良する形を取らなかったのですか?
沓水氏:シフオプはチェーン展開するような大手企業向けのサービスです。大企業には満足度が高い構成になっていますが、中小企業、とりわけ家族経営しているような小規模店舗にとっては複雑すぎたり、過剰な機能が盛り込まれたりしています。
一方で、コミュニケーションツールもこの数年で様変わりしました。それまではメールでシフトスケジュールを申告するシステムでしたが、今の大学生はメールアドレスを持っていない。みんなSNSなどのチャットでコミュニケーションしているんですね。幸い、シフトボードは400万ダウンロードを超え、若い層にとってある程度の知名度がある。シフト管理ツールとチャットツールをつなげて小規模店舗向けの新しいサービスを作ればニーズを取り込めるだろうと考えました。

小規模店舗のシフト作成にこそ無駄がまだまだあると。
沓水氏:その通りです。我々のヒアリングでは、店長がシフト作成に使う時間は月間平均15時間。実にこのうち87%がコミュニケーションに費やされています。シフト表を提出してもらったはいいが、曜日と日付がずれていてどちらが正しいのかわからなかったり、「やっぱりあの日ダメです」と言われても「あの日」がどの日を指すのかわからなかったり。連絡の取り方も、メールもLINEも紙もある……。シフトを作るための情報を得るまでが非常に煩雑なんです。
実際に、Airシフトの導入でシフト作成時間が月平均で6割ほど削減されるという結果が得られています。「9割削減できた」と答えた店長もいらっしゃいました。
なるほど。沓水さんから見ると、小規模店舗にはシフト管理のほかにもまだまだ効率化できる点が残っていますか。
沓水氏:たくさんあると見ています。特に店長とスタッフの間で起こるコミュニケーションにはまだまだ改善できる余地が残っています。