自信に根拠はありませんでした(笑)

その自信はどこから?

山口氏:根拠はありません(笑)。ただ、なんというか2010年ごろから自分が「無双」のような状態になっていたんですよ。ドラゴンボールで言えばスーパーサイヤ人のような。何が何でも作りたい、という興奮状態です。できるかできないかはやってみないと分からない。コンテンツが不安なのであれば、カリスマ講師との接点を作ってしまおうと動き出しました。New RINGの担当役員からも「最終審査でも必ずコンテンツの実現性が問われる」と言われたところでした。

 会社の同僚に「カリスマ講師の知り合いいませんか?」と聞いて回っていたところ、後輩が「知り合いの知り合いに、中部地方の大手予備校でカリスマと言われている講師がいる」と教えてくれました。それが今、人気英語講師として活躍いただいている肘井学先生でした。

当時から人気があった講師をどう引き抜いたのですか?

山口氏:肘井先生に連絡を取ると、「東京まで行く」と。よく分からないリクルートの担当者が「インターネットで授業を配信する」とか甘いことを言っているので「論破してやる」と思っていたらしいんですね。

 今は随分丸くなりましたが、当時の肘井先生はジャックナイフのようなキャラクター。野球帽を深めにかぶって現れて、こっちも身構えました。

口説き文句は。

山口氏:これはその後に依頼する時も必ず言っていることなのですが、こんなことを伝えました。

 「2000年くらいからeラーニングはあるが普及していない。それは既存塾や大手予備校にとってネット型の授業は既存事業とトレードオフの関係にあるから。ネットだから安くする、ネットだけクオリティを上げる、といったことはイノベーションのジレンマで絶対にできない。だから中途半端になっている」

 「でも、僕らは新参者だからこそできる。教育事業者ではないが、インターネットメディアの事業会社として、よりよいサービスを作った経験とケイパビリティがある。そこに先生のような情熱を持った講師によるコンテンツを載せれば、その熱量を直接リアルな場で10人、100人の生徒に伝えることはできないが、インターネットを通じて、勉強して人生を変えたいと思っている何十万人、何百万人に届けられる。地域格差や所得格差を超えたサービスになると思っている」

 実際、肘井先生も既存の予備校に不満を持っていたんです。カリスマになればなるほどコマが埋まり、土日は生徒獲得のために説明会などに出席することになる。自分のスキルをアップデートする時間がない。しかも、医学部コースや東大早慶コースなど、富裕層が集まりがちなコースの担当になる。教育に未来を託したいと思う反面、教えているのはともすればお金持ちばかりで、本当に熱量を持って教えるべき相手に授業を届けられていないのかもしれない、と。

 僕が口説いていくうちに「実は自分も同じようなジレンマを持っているんだ」と明かしてくれました。「ちょうど辞めるかどうか悩んでいるところだったので、乗っかるよ」と。

 しばらくすると肘井先生から連絡があって、「英語だけではダメで、最低でも数学が必要。会ったことはないけど同じ予備校で数学を教えている山内恵介先生を引き抜きたい」と依頼され、すぐに名古屋に飛びました。New RINGの最終審査まで1カ月を切っていました。

 2010年のクリスマスイブ。名古屋駅前のマリオットアソシアホテルのラウンジで、肘井先生、山内先生、僕、一緒に事業を考えていた西山亮介の4人。周りは全てカップルの中、でかい男4人が暑苦しい感じで向き合っていたんです(笑)

 その時、山内先生は結婚されたばかりで、安定した生活が送りたかったのかもしれません。でも、課題感やもっとチャレンジしたい気持ちも持っていらっしゃって、「どうなるか分からないけど、参加させてもらいます」と言ってくれました。

す、すごいエピソードですね……。まだ事業化が決まったわけでもないのに。

山口氏:そうですね。その時は2人とも「我々は腕だけは磨いてきたから、もし事業化されなくても食っていけるよ」というコメントをもらったんです。2人には講師としてだけでなく、サービス全体を今でも見て頂いています。

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