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圧倒的にヒト・モノ・カネをかけている

川本 広二
リクルートR&D次世代事業開発室室長 1998年リクルート入社。ネット商品黎明期より、リクルートの住宅領域の現在の商品企画の原型となるサービスを数々生み出す。SUUMOブランド立ち上げ、SUUMOネット立ち上げPJリーダーを経て、リクルート住まいカンパニーのネットビジネス統括本部長、事業開発室長を歴任。2017年10月より現職。リクルートグループの新規事業開発を統括し、新しい事業やサービスの発掘と育成を行う。

「新規事業がなかなか生み出せない」「アイデアはあっても事業化までたどり着けない」という声を聞きます。

川本 広二(以下、川本氏):私もよく他社からのヒアリングを受けますが、よく言われるのは「リクルートは新規事業提案の数が圧倒的に多い」という点ですね。今年度の「Ring」には629件の新規事業の応募がありました。グループでの応募が多数ですので、提案した人数に換算すると1000人を超えます。

 案件が少ないという会社は投資と手間が足りないのかもしれませんね。

数が多いのは「リクルート」の文化?

川本:多少は社風が影響しているのかもしれませんが、圧倒的にヒト・モノ・カネをかけているからだと考えています。リクルートだからといってすぐに応募が集まるわけではありません。きっと、ただ募集しただけでは、ほとんど数は集まらないでしょう。出してもらうための投資と手間を相当かけているからこそ集まるんです。

 しかも、1年ではうまくいかない。

 僕は他社の新規事業制度の支援をしていますが、「畑と同じで2、3年かかりますよ」と必ずお伝えします。初年度はお試し。耕すだけ。でもその翌年もしつこくやる。社長からもしつこくメッセージを出し続ける。そうしていかないと制度自体がうまく回っていきません。

 難しいのは、事業開発というのは短期視点だと経営合理性が高くないこと。来年、再来年のPLにはほとんど貢献しない。やらなきゃいけないとみんな思っているのですが、投資するのが難しい。割に合わないから。

投資と手間とは。

川本:Ringの応募を開始したのが昨年3月。まずグループ全従業員に対して一斉メールを打ってスタートし、そこからエントリー締め切りまでの3カ月間で我々次世代事業開発室のメンバーが全国を行脚し、ワークショップを繰り返します。昨年は3カ月で72回やりました。ひたすら応募してもらうためのイベントをやり続けるんです。

 いいアイデアを持っている社員は多いのですが、事業開発を実際に経験してる人はほとんどいない。ハードルが高いので、まずワークショップでそれぞれのアイデアを「事業案」にするためのサポートを繰り返します。72回で述べ3000人が参加しました。参加者に自信を植え付けていくんです。「あ、こうすれば提案までたどり着けるんだ」という気付きを得てもらう。