「ゲーム市場が飽和というのは違う」

入山:「ふる」さんという読者の方から、ゲーム市場について、「プレーヤーの数は人口減少により減り続けて、パイの取り合いになっている」という指摘があります。ゲームの境界線が溶け、融合しつつあることは、市場にどう影響するのでしょうか。もっと伸びるのか、頭打ちになるのか。齊藤さん、いかがですか。

<span class="fontBold">入山章栄(いりやま・あきえ)</span><br>早稲田大学ビジネススクール教授<br>1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。(写真:陶山 勉)
入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授
1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。(写真:陶山 勉)

齊藤:これからゲーム市場が爆発的に伸びていくかというと、ちょっと難しいかもしれません。ただ、飽和状態というのとは違うと思います。ゲームを今、全くやっていない方はたくさんいらっしゃいます。健康、教育といった分野で使われていく可能性もあります。様々なイベントや、「eスポーツ」のような興行をきっかけにプレーヤー人口を増やせれば、人口が減る中でも緩やかに拡大を目指すことは可能ではないかと思います。

入山:金野さんはどうお考えですか。

金野:先ほどの読者の方は、おそらく日本をイメージしてコメントしていると思うんですが、我々にとっては、既に日本は1つのリージョンでしかありません。グローバルでビジネスを展開していますから、商圏はどんどん広がっていくとみています。

(写真:陶山 勉)
(写真:陶山 勉)

安田:世界市場を見れば、人口動態は国内とは大きく違いますからね。スマホの端末自体、世界的には保有者がどんどん増えています。潜在的なユーザーは世界ではまだまだ増えていくと。

金野:そうですね。海外はまだまだ伸びしろが大きいと考えています。それに加えて、「何をもってゲームととらえるか」というところがある。家庭用ゲームとスマホゲームが融合しつつあると言いましたが、ゲームとそのほかのエンターテインメントの領域もどんどん曖昧になりつつあります。例えば、動画にゲームをプラスしたサービスを提供するとか、いろいろな楽しみ方をお客様に提供できるようになっています。そういう意味では、決して悲観的ではなくて、環境が整ってきたとポジティブにとらえています。

安田:なるほど。もう1つ、読者の方から気になる質問が届いています。「優良可」さんから。

 「ゲームは損をしないように『鉄板の続編』が多くなる傾向があるように見えます。新しい刺激がないと面白いと思われないのに、一度売れた作品の続編でないと売れない。この矛盾する問題に業界はどう未来を切り開けばいいのでしょうか?」

 確かに、ゲームメーカー各社には「出せば売れる」という人気シリーズがありますよね。僕、対戦型の格闘ゲームがすごく好きで、バンダイナムコの「鉄拳」シリーズもよくやっていました。個人的には、そういう人気シリーズってすごく好きなんですけど、新しい刺激が必要じゃないかという読者の方の指摘も分かります。一度売れたゲームの続編ばかりになるのはどうかと。金野さん、その辺りはいかがですか。

金野:今、ちょうど手元に「アイドルマスター」のペットボトルを持ってるんですけど……。

入山:「アイマス」は、アイドルを育てるシミュレーションゲームですよね。ものすごく人気がある。特に声優が人気ですよね。

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