ドラッグストア、Amazonフレッシュも競合に

大阪大学経済学部准教授
2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『改訂版 経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。
入山:そう考えるとコンビニのライバルって多いですね。ECもあれば、ドラッグストアもあれば……。
宮﨑:都会では「Amazonフレッシュ」なども競合してきますね。
入山:「Amazonフレッシュ」もライバルになるのか。これから大変ですね、コンビニ……。
宮﨑:これまでもコンビニは自由競争下で切磋琢磨しながら、新商品・新サービスの開発や品質向上を図ってきました。これからもお客様の生活に合わせた価値を出していくことが必要です。
安田:そうやって競争が激しくなる中では、顧客データの活用というのが大事になっていくと思います。ローソンはどんなことを考えていますか。
宮﨑:ローソンは共通ポイントサービス「Ponta」を導入しています。1カ月の間にローソンでお買い物をされるお客様は延べ4億人いらっしゃいます。約半数のお客様がPontaカードをご提示されるので、たくさんのデータが蓄積されます。今までは商品開発や店舗の品揃えなどに生かしてきましたが、これからワン・トゥ・ワンマーケティングで「その人だけにお薦め」という商品のご提供や、健康管理への活用なども考えています。
グループにローソン銀行があります。銀行ならではの廉価で新しい決済システムの可能性もあります。例えば地方に離れて住む親御さんとつながり、日々のお買い物情報が届き、かつこちらから決済できたり、安全の見守りと決済システムと連動することも可能かもしれません。
安田:これからデータ活用が進むと、商品開発も販売も進化し、結果的に加盟店へのフィードバックも良い方向に変わっていきそうですね。
入山:そうですね。働き方もこれからどんどん改善されていくでしょうし。今年、いろいろと騒動のあったコンビニですが、これを糧により良い発展が期待できそうです。
安田:アメリカ発祥のコンビニですが、日本に持ち込み、日本風のアレンジでかなり違うビジネスに生まれ変わりました。ローソンが中国に2300店舗出店しているように、海外にその日本風のコンビニビジネスが進出しています。
外から取り入れて中身をガラッと改良して外に持って行くっていうのは日本の得意パターンです。未来のコンビニで医療・健康というキーワードも出てきました。さらに日本ならではのコンビニサービスをどんどん拡充させていって、日本でも、さらには世界でも、暮らしを良くしていってほしい。そんな希望を感じられる未来予想図になった気がします。
入山:前半、厳しい議論もありましたけれど、後半は明るい未来が描けました。荒井さんには、これからもぜひブランパンのドーナツみたいなおいしい商品をさらにガンガンつくっていただければと。
安田:長い議論の後でのどもかわいたところですし、「グリーンスムージー」をいただきながら終わりにするということで……。
入山:どうありがとうございました。
略歴
宮﨑純(みやざき・じゅん)
ローソン専務執行役員
1980年日本エアシステム(現日本航空)入社。広報室羽田分室長などを歴任。2003年ローソン入社。執行役員コミュニケーションステーションディレクターなどを経て、2015年常務執行役員・コミュニケーション本部長兼広報室長兼社長室長兼人事副管掌などに就任。2018年から現職。
荒井淳司(あらい・じゅんじ)
ローソン人事本部人事管理部長
(取材時点ではローソン中食商品本部商品戦略部長)
1997年ローソン入社、店舗勤務を経て店長。その後スーパーバイザー、業務企画室、経営戦略ステーション戦略企画、商品戦略部マネジャー、シニアマネジャーなどを経て2014年から商品戦略部長。
中井彰人(なかい・あきひと)
nakaja lab代表
みずほ銀行の中小企業融資担当を経て、同行産業調査部にてアナリストとして産業動向分析に従事。中小企業診断士として独立する。
入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授
1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。
安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授
2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。
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