
リアル店舗でお客の医療・健康をサポート
荒井:私は「近」というキーワードを書きました。コンビニエンスストアというのは、どうお客様に近づいていくかを考えてきたビジネスです。これからも近づくことをずっと追求し続けていくだろうと思っています。
近づき方もいろいろあります。1つは、今お話があったように、距離をいかに縮めるか。今まではリアル店舗で近づこうとコンビニエンスストアを展開してきました。さらに近づくことを考えるなら、弊社が今やっている移動販売という方法があります。クルマの中に商品を積んで高齢者施設や中山間地域に行くというサービスを積極的に進めていく。先ほどお話が出たように、オフィスの中で買い物が難しいお客様向けにサービスを提供する。そういう近づき方もあります。
もう1つの近づき方は、お客様の心理状態に寄り添って買い物の距離感を縮めることです。私は商品本部にいますので、データを分析することで、時間帯によって何を食べたいか、何を買いたいかをとらえた商品開発をさらに進め、お客様に寄って行くことを考えていきたいと思っています。
もう1つ、今、ローソンには1万5000店舗のうち、イートイン店舗が5000店舗ぐらいあります。10年を待たずに、そこが憩いの場に変わったり、高齢者の方のコミュニケーションの場に変わったりと、モノを売るだけではない付加価値を提供するようになると思っています。
最後がオーナーさんとの距離感です。加盟店オーナーさんとのコミュニケーションを密にして、その距離感を10年後にはさらに近いものに発展させていきたいと考えています。

ローソン人事本部人事管理部長
(取材時点ではローソン中食商品本部商品戦略部長)
1997年ローソン入社、店舗勤務を経て店長。その後スーパーバイザー、業務企画室、経営戦略ステーション戦略企画、商品戦略部マネジャー、シニアマネジャーなどを経て2014年から商品戦略部長。
左:宮﨑純(みやざき・じゅん)
ローソン専務執行役員
1980年日本エアシステム(現日本航空)入社。広報室羽田分室長などを歴任。2003年ローソン入社。執行役員コミュニケーションステーションディレクターなどを経て、2015年常務執行役員・コミュニケーション本部長兼広報室長兼社長室長兼人事副管掌などに就任。2018年から現職。
安田:モノを売るだけでなく、付加価値を提供するという話は、入山さんが挙げたものと共通しますね。
入山:そうね。僕はレジ越しと言いましたけれど、店舗そのものがコミュニケーションの場になるということですよね。
安田:商品戦略部長の荒井さんはこうおっしゃっていますけれど、重鎮の宮﨑さん、いかがでしょう。
宮﨑:今、コンビニは電気・ガス・水道に次ぐ「第4のインフラ」といわれていますが、これからもお客様の支持を得られるかはまだわかりません。これまでもいろいろな社会の変化に対応しながら、やっと生き抜いてきたというのが実情です。これから高齢化が進み、女性がさらに社会進出し、人口減少で市場が縮小し、ECが成長するといった変化がさらに加速する中で、全国にある5万6000のリアル店舗をどう生かし、お客様の支持を得ていくかを考えなくてはなりません。
まず、AI(人工知能)などデジタル技術を活用してお店の負荷を減らし、店員さんたちには、近くに住む高齢のお客様などが来店したときに、コミュニケーションをとりながらやすらぎの場とする方向に力を入れてもらわなくてはなりません。
もうひとつ進んで、これから高齢化は一層進みますから、医療・健康のお役に立てるリアル店舗にしていきたいです。医療はまだまだ規制が厳しいのですが、たとえば将来、大学病院などになかなか行かれないお客様が、コンビニに置いてある無人の機器を使えば、画面を通して遠隔診察が受けられるサービスなどをイメージしています。
入山:ちょっとした診療所みたいなものをコンビニの中に取り込んでしまうと。
宮﨑:はい。今、東京・文京区のローソン千駄木不忍通店には介護や栄養の相談窓口を設置しています。周辺には高齢者の方が多いので、お客様を集めた体操イベントを実験したりしています。さらにレベルアップし、このようなお店を全国に増やしていきたいと思います。
最終的には店舗おペレーショにデジタルの力を活用し、1~2人の人員で対応できるようにしたいですね。店員さんはレジから出て接客に専念するような形スタイルが理想です。