
早稲田大学ビジネススクール教授
1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大学経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。
コミュニケーション自体が新たなサービスになる
入山:レジ越しのコミュニケーションをこれからの10年間、どう発展させていくかがコンビニのカギになると思っています。
僕、早稲田大学のキャンパスの11号館というビルに研究室があるんです。その1階にはファミリーマートが入っているのですが、店員は早稲田大学の国際教養学部に通う留学生ばかりでほぼ全員外国人。日本に来てまだ間がないのでみんな日本語がたどたどしい。人の入れ替わりが激しいせいもあって、ついに店員たち、日本語を使うことを放棄し始めて、「Do you need a receipt?」って言ったりしてます。
一部の日本人は戸惑うのかもしれないけれど、これって一種のグローバル化だなと思って。つまり、そういう国際交流みたいなものが、コンビニのレジのこっち側とあっち側で生まれつつあるわけです。
地方のコンビニの場合も、地元のおじいちゃん、おばあちゃんが来て、店員の方とお話しして帰るという、コミュニケーションの場になっています。ある種、病院と似た機能を持っているんですね。
コンビニって、最先端のテクノロジーを使ってマーケティングしたり在庫管理したりしていますが、一方で最後まで人間らしさが必要というところもある。レジ越しのコミュニケーションをどう上手に活用していくかがポイントになるのではないかと思っています。ぜひこの視点を考えていきたいと。
安田:モノを売る場としてだけでなく、コミュニケーション自体が新たなサービスとして付加価値を生み出すと。そういうポテンシャルは大きそうですね。では次に中井さん、お願いします。

nakaja lab代表
みずほ銀行の中小企業融資担当を経て、同行産業調査部にてアナリストとして産業動向分析に従事。中小企業診断士として独立する。
中井:私は「フードデザートソリューション」と書きました。フードデザート、食の砂漠ですね。
人口が減少した地方やお年寄りばかりの団地には「買い物難民」と呼ばれる人たちが今もいます。歩いて行ける範囲にスーパーもドラッグストアもなくて非常に不便に感じている人たちですね。そういうところにコンビニが出て行って問題を解決することができると思っています。
利益を追求しない人たちがコンビニのフランチャイジーとして運営主体になったっていいわけです。たとえば団地の中であれば、住民の皆さんが受け皿となって共同でお店を運営することもできます。店舗の運営ノウハウは本部が全部持っているのですから、それを持ってきて団地のためのコンビニをつくっていくという形です。
入山:実は都心の高層ビルもフードデザートですよね。30階とか40階で働いていると、お昼時にはエレベーターが激混みするので降りられない。高層ビルの上の方にも難民はいっぱいいます。ローソンはそういうオフィスに無人店舗を入れていますけれど。そういうことを団地でもできるのではないかと。
中井:そうです。無人もあり得るでしょう。フードデザートで困っている人たちのところで店を運営すると。今まで、コンビニの店舗はいかに日販を増やすかということばかり考えてきましたけれど、そういう店は最低日販だって構わない。団地の住民からボランティアを募って運営したっていいんです。ぜひ社会問題となったフードデザートを新たなコンビニが解決してほしいと思います。
安田:なるほど。では荒井さん、お願いします。