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安田:鈴木さんの見立てでは、日本には自動運転業界とか「MaaS」の世界でリーダーになるチャンスがあるということですね。逆に言うと、このチャンスを取りそびれると、日本の産業は厳しいっていうことになりますね。

鈴木:そうですね。この10年が勝負だと思いますね。

安田:なんとしてもここでチャンスをつかまないといけないですね。では満を持して中島さん。

中島:今、日本で自動車業界を引っ張っている企業が、引き続き世界のリーダーになれる可能性は十分にあると思います。

 さっきのスマイルカーブの話ですが、お付き合いすればするほど、自動車という分野で、スマイルカーブの真ん中にいるOEMメーカーの努力やノウハウの質はすさまじい。この座布団は結構厚くて、まだ十分に世界をリードするだけのノウハウがあるという印象です。

 それから、OEMメーカーは製造だけでなく販売会社も持っています。ここはサービスも請け負うので下流工程ですね。自動運転技術が進化して高度化すればするほど、メンテナンスやアフターサービスによってクルマの安全・安心を維持し続ける価値はぐっと高くなります。下流工程も持っている自動車メーカーは実は磐石だと思っています。

日本の自動車業界はこの10年が勝負

安田:そうか。これから自動運転がサービスの分野で広がっていくとなると、その価値は非常に重要になりますね。

中島:そうです。ただ、クルマの販売台数はどうしたって減りますから、もうけ方を変えないといけない。今までみたいに何年かに1回だけメンテナンスに持ってきてもらったり、車検のときに補修したりということではなく、日々メンテナンスフィーを受け取るようなビジネススキームにしないと生き残れないと思います。ビジネスモデルのスムーズな転換ができるかどうかにかかっていると思います。

入山:それは大事なポイントですね。強みを生かしながら、きちんと変革できる会社ならば、おそらくこれからも世界をリードできるということですね。

 いや、今日実は僕、始まる前まで、自動運転にも日本の自動車業界にも少し悲観的な見方をしていたんです。でもお話を伺えば伺うほど、結構、未来は明るくて、希望が持てるんだなと思いました。まさに自動運転業界、自動車業界の未来が見えたなと思います。

安田:改めまして、お2人に感謝をして。

入山:はい、本当にどうもありがとうございました。

中島・鈴木:ありがとうございました。

本日の出演者

中島 宏(なかじま・ひろし)
ディー・エヌ・エー常務執行役員

大学卒業後、経営コンサルティング会社へ入社。2004年12月DeNAへ入社。2009年4月より執行役員に就任。新規事業推進室室長、ヒューマンリソース本部本部長、マルチリージョンゲーム事業本部長を歴任後、2015年にオートモーティブ事業本部を設立、本部長に就任。2019年4月から常務執行役員。次世代タクシー配車アプリ「タクベル(現MOV)」、日産自動車との無人運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride」、完全自動運転バス「ロボットシャトル」、個人間カーシェア「Anyca」などを手掛ける。


鈴木裕人(すずき・ひろと)
アーサー・ディ・リトル・ジャパンパートナー

アーサー・ディ・リトル・ジャパンにおける自動車・製造業プラクティスのリーダーとして、自動車、産業機械、エレクトロニクス、化学などの製造業企業における事業戦略/技術戦略の策定支援、経営・業務改革の支援を担当。近年は、自動車業界にとどまらず、モビリティー領域に関する事業構想支援、アライアンス支援、技術変化に備えたトランスフォーメーションなどを多く手がける。著書に『フラグメント化する世界-GAFAの先へ-』『モビリティー進化論-自動運転と交通サービス、変えるのは誰か-』(いずれも日経BP)。


入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授

1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)などがある。


安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授

2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。