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10年後、VWは中国の会社になっている?

安田:日本の自動車メーカーはスマイルカーブの底に沈まないような施策をすでに先駆けて打ち始めているということですね。わかりました。

 続いて僕もさらっと「○」の理由を言うと、今のお話にも出てきたように、自動車メーカーは一歩先、二歩先を意識しながら、ワーストケースを避ける積極投資をしているんじゃないかと見たからです。

 もっとも、実を言うと、僕は今日お2人のお話を伺う前は、やっぱり厳しいんじゃないかと思っていたんですが……。

安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授

2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。

入山:うん。今日の話を聞くとかなり違うよね。

安田:自動運転でも、隠し持っている技術があるというお話ですし。そんなことから考えると、世界の自動車市場をけん引してきたメーカーとしての先行者利益はまだまだ効いてくるのかなと思いました。ただし、この先5年ぐらいの投資は非常に重要だという印象を持っています。

 ではここからはプロのご意見をお聞きしましょう。鈴木さんからお願いします。

鈴木:入山さんが指摘した電気自動車というのは非常に重要なキーワードで。経営的に言うと、電気自動車はそのままだと絶対儲からない。

入山:うん。さっきのスマイルカーブですね。

鈴木:そうです。だからエンジン車をつくった方が絶対もうかります。電気自動車は環境規制が厳しいところから増えていくので、欧州と中国で普及が進むと考えられます。欧州と中国って、幸か不幸か、トヨタはじめ日本のメーカーはそんなに強いマーケットではないんですよ。強いのはフォルクスワーゲンなど。ということは、フォルクスワーゲンの方が先にもうからなくなる。だから私は、10年後にはフォルクスワーゲンはなくなっているか、中国の会社になっているか、どっちかだと思っているんですけれども。

入山:おっと。大胆発言が出ました。えーと、関係者の方、これはあくまで個人の予測ですので。

鈴木:はい。すみません。

安田:その頃には中国やヨーロッパでは電気自動車化が進行しきっていると。

鈴木:はい。なので、相対的に日本は結構いいポジションにいる。主戦場としているマーケットがそんなに電動化が進まないという意味で、すごくラッキーなんです。その間に、いかに先行投資を続けられるかが重要です。

 それから、日本には自動車みたいなすり合わせの機械の産業があって、DeNAみたいなITの産業があって、エレクトロニクスの産業もある。そういう多様な産業が全部集まっているというのは大きなアドバンテージです。ドイツはITがそんなに強くないし、アメリカは機械やエレクトロニクスが今あまりない。日本の産業構造は、これから自動車のサービスをつくっていく上で、すごくいい状態にあると思います。