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使ってわかる、「やっぱり高級車っていい」

入山:所有か使用かという話でいうと、前にあるデザイン会社の社長さんから面白い話を聞いたことがあります。人間には所有欲と使用欲があって、使用すればするほど、所有欲が高まるっていうんです。例えば、漫画の世界では今、スマホに取って代わられて雑誌は全く売れない。『少年ジャンプ』も『少年マガジン』も部数はかつてに比べてずいぶん減っています。けれど、コミックはそんなに落ちていない。スマホで漫画を読んで所有欲をかき立てられた人たちが、例えば「『ワンピース』を全巻そろえておきたい」とコミックを買っているからです。

 そこから考えると、「ポルシェ」みたいな豪華なクルマは所有するためのクルマとして残るんじゃないでしょうか。感性を満足させるものですから。

鈴木:高級車はたぶん残ると思います。大衆車はやはり機能性の面で使う方が多いので、中島さんがおっしゃるように、減っていく可能性はある。

中島:所有欲と使用欲の切り口で「まさに」と思う話があります。我々は「Anyca(エニカ)」という個人間カーシェアリングサービスを手掛けています。運営しているのは20~30代のメンバー。20代で都心に住んでいたら、ふつうクルマなんて持てないじゃないですか。ところが、ある日気付いたら、「Anyca」の運営メンバーがやたらと高級車を持っているんですよ。「なんでオレよりいい車を持っているんだ」と思うぐらいに(笑)。

中島 宏(なかじま・ひろし)
ディー・エヌ・エー常務執行役員

大学卒業後、経営コンサルティング会社へ入社。2004年12月DeNAへ入社。2009年4月より執行役員に就任。新規事業推進室室長、ヒューマンリソース本部本部長、マルチリージョンゲーム事業本部長を歴任後、2015年にオートモーティブ事業本部を設立、本部長に就任。2019年4月から常務執行役員。次世代タクシー配車アプリ「タクベル(現MOV)」、日産自動車との無人運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride」、完全自動運転バス「ロボットシャトル」、個人間カーシェア「Anyca」などを手掛ける。

 よくよく聞いてみると、「カーシェアすることを前提に高級車を買っています」という話なんです。シェアリングすれば個人の負担は軽くなりますから。

入山:高いクルマをシェア前提で買っているんですね。

中島:そう。でもそれなら、自分で買ってオーナーにならなくても、ふつうに「Anyca」で利用すればいいじゃないですか。どうやら、最初はそうしていたらしいんです。ところがポルシェとかBMWとかに乗っているうちに、欲しくなってきちゃったと。「中島さん、知っていますか。やっぱり高級車っていいんですよ」って。

入山:へえ。それで持ちたくなったんだ。

中島:でもそんな高級車を買うほどの金銭的余裕はない。なのでシェアリングを前提に買おうとする。つまり金銭負担をなるべく抑えながら所有欲を満たそうとしているんです。