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議論は白熱

日本は“自動運転大国”になるポテンシャルが高い

中島:新幹線って、車両自体は重工メーカーがつくっていますね。電線整備などインフラを構築するのは電力会社。世界最高の1分の狂いもない車両マネジメントシステムは日立製作所がつくっている。オペレーションを含めてそれらをラッピングしているのがJR。水平分業で、いろいろな領域を担う人たちが1つの社会交通システムである新幹線というものを共同でつくり上げています。

 自動運転もそれに近くて、OEMメーカー、キットメーカー、サービサー、旅客運送事業者が一緒になってロボットタクシーというパッケージをつくっている。新幹線は今、国際展開していて、中国やフランスと競合しています。

 自動運転時代のロボットタクシーも同じような競争が都市ごとに起こっていくだろうと。今、いろんな企業が世界各地で開発を進めていますが、たぶんどこかの都市で先に磨きを掛けたところがそれを輸出するでしょう。

鈴木:実は公共交通にこんなに民間企業がかかわっている国って日本以外にはあんまりないんです。ヨーロッパではほとんど都市の交通局みたいなところが取り仕切っているので。日本には私鉄もあるし、大きなタクシー会社もある。民間ベースでそういう企業が成り立っているというところは日本の強みになり得ると思います。

中島:それにトヨタ自動車、日産自動車、ホンダとグローバルでもトップクラスのOEMメーカーがこの狭い国土の中に集中しています。周辺技術を持った会社もたくさんある。さらに政府も強力に推進しようとしている。意外と日本はいろんな条件がそろっています。

入山:実は日本って自動運転大国、自動運転先進国になるポテンシャルがめちゃめちゃ高いんですね。

中島:チャンスは大きいと思います。

安田:国内競争が激烈な業界で勝ち残ると海外でも十分に競争力を持つことができる。これはどんな分野でもそうですからね。

入山:DeNAはそういう中で新しいプレーヤーとして入って、ゆくゆくはグローバル展開も考えているということですね。

中島:そうですね。水平分業の1レイヤーを担いたいです。ラッピングするのは我々じゃなくてもいい。でも、「ラッピングします」という企業が現れないのであれば我々がやりましょう、と思っているところです。

安田:世界展開できたら、「トヨタのクルマに乗ろう」「日産のクルマに乗ろう」ではなく、「DeNAを使おう」となるわけですね。

入山:現に今、新幹線はどの重工メーカーがつくった車両かは気にせず、JRのサービスとして利用していますからね。同じことが自動運転の世界でも起きるようになると。 

安田:ちょうど今後の話が出ましたので、第2回はここで終わりにして、次に未来の話をお聞きしていきましょう。

本日の出演者

中島 宏(なかじま・ひろし)
ディー・エヌ・エー常務執行役員

大学卒業後、経営コンサルティング会社へ入社。2004年12月DeNAへ入社。2009年4月より執行役員に就任。新規事業推進室室長、ヒューマンリソース本部本部長、マルチリージョンゲーム事業本部長を歴任後、2015年にオートモーティブ事業本部を設立、本部長に就任。2019年4月から常務執行役員。次世代タクシー配車アプリ「タクベル(現MOV)」、日産自動車との無人運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride」、完全自動運転バス「ロボットシャトル」、個人間カーシェア「Anyca」などを手掛ける。


鈴木裕人(すずき・ひろと)
アーサー・ディ・リトル・ジャパンパートナー

アーサー・ディ・リトル・ジャパンにおける自動車・製造業プラクティスのリーダーとして、自動車、産業機械、エレクトロニクス、化学などの製造業企業における事業戦略/技術戦略の策定支援、経営・業務改革の支援を担当。近年は、自動車業界にとどまらず、モビリティー領域に関する事業構想支援、アライアンス支援、技術変化に備えたトランスフォーメーションなどを多く手掛ける。著書に『フラグメント化する世界-GAFAの先へ-』『モビリティー進化論-自動運転と交通サービス、変えるのは誰か-』(いずれも日経BP)。


入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授

1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP)などがある。


安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授

2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。