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自動運転が本格的に普及していく過程で、法規制や道路事情なども含めて様々な想定外の課題も出てきそうです。自動運転の実現にはどのような課題があるでしょうか? また各国、各社がしのぎを削る中で日本は自動運転大国になれるでしょうか? コメント欄にご意見を募集しています。

 各業界をよく知る第一線のゲストに話を聞きながら、今後、その業界がどう変わっていくかを探る連載「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」。第3回シリーズ(File 3)では、モビリティーの新たなサービスやプロジェクトに積極的にかかわるDeNAの中島宏常務執行役員オートモーティブ事業本部長と、アーサー・ディ・リトル・ジャパンのパートナーで自動車業界・自動運転業界に精通している鈴木裕人氏をゲストに招き、自動運転業界についての議論を展開中だ。

 今回の議題は「自動運転業界の課題」。ドライバーなしのクルマが街中を走るとなれば、技術の成熟が不可欠な上に、制度や法律などの仕組み整備も必要となる。果たしてその準備は進んでいるのか……。世界中で過熱する「自動運転化競争」で日本はどんなポジションにあるのか。議論からは日本の“意外な強さ”が浮き彫りになった。

(取材・編集=小林 佳代)

安田:このシリーズでは自動運転業界について、ゲストのお2人と議論を進めています。今回は自動運転業界の課題について、お聞きしていこうと思います。

 前回、自動運転業界の現状についてお話しいただき、業界で注目されるキーコンセプトの「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」についても説明をしていただきました。モビリティーの領域で「モノからコト」へのサービス化が進むならば、法律やシステムなどの環境整備は欠かせませんね。

入山:そうなんですよ。だって2023年までには、無人の自動運転車が出てくるだろう、それが実現できない会社は「遅れている」と思われるだろうっていう話ですから。正直、「すげえな」と思いましたけれど。一方で僕は、自動運転車がきちんと走るための制度や仕組みはまだ整っていないんじゃないかという気がして、そんな中で出てきちゃって大丈夫なのかとも感じます。

安田:「日経ビジネス電子版」の読者の方からもその辺の質問をいただいています。機械系設計者の方で「延長被雇用のおじさん」から。「今までは道路環境などの外因があっても、全てをドライバーの責任として済ませてきた。自動運転でも責任の所在問題が残る」とあります。運転操作が人間から機械に変われば、全体として安全性は高まるのでしょうけれど、万一の事故が起きた時に誰が責任を取るのか。根本的な問題がありますね。

入山:よく出る話ですね。自動運転の判断に誰が責任を取るのかと。

中島:これはもし間違っていたらぜひ補足していただきたいのですが……。よく日本は自動運転の法改正が遅れているという指摘があります。

入山:僕、自動運転業界の素人ですけれど、完全にそういうイメージを持ってます。

中島:実は日本って結構進んでいると私は思っているんです。2015年ごろは確かに遅れていた。けれど2016年、2017年と、「世界に後れをとってはならない。2020年までに完全自動運転車が走れるよう、法改正を終えなくては」と政府がリーダーシップを発揮してきた。

入山:そうなんですか。2020年というともう来年ですが……。

中島:民間事業者を困らせるわけにはいかない、必要な法改正をやろうと、関連省庁に横ぐしを刺して徹底的に法改正の準備をしているところだと認識しています。

入山:鈴木さんも同じ意見ですか。

鈴木:はい。そういう意味でも、自動運転はDeNAのような事業者がクルマを使ってサービスするところから普及するだろうと思います。たとえば、今、タクシードライバーが事故を起こしたら、タクシー会社が責任を取りますよね。それが自動運転車になるだけですから。タクシー会社のビジネス構造からすると変わらない。

 自家用車の場合はどうかというと、今は事故を起こせばほとんどがドライバーの責任です。それが、自動運転ではクルマのメーカーが責任を持つというようなことになったら自動車会社も困ってしまう。