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入山:今、鈴木さんに説明していただいた「MaaS」の3つの定義でいうと、DeNAはどこに注目しているのでしょうか。

入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授

1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得(Ph.D.)。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)などがある。

中島:第1のサービス化、「モノからコト」については、まさに今、取り組んでいる最中です。積極的に投資をしています。第2の複数の交通手段の統合は鉄道会社などがやりたいという意向をお持ちなので、我々は「協力します」という立場です。主体的にはやっていません。第3の「ビヨンドMaaS」にはものすごく興味があって、調査や研究開発をどんどん進めているというところです。

安田:最先端のところに切り込んでいるわけですね。

鈴木:アジアでは、グラブやゴジェックが配車サービスを手掛けていますが、彼らはまさにモビリティーを中心に買い物や宅配など周辺の生活サービスを統合する方向で今、ものすごく成長しています。先進国ではなく新興国からそういう最先端のものが出てきているというのが、この領域の面白いところだと思います。

中島:「イノベーションのスキップ」ですよね。たとえば、スマートフォン決済って中国で真っ先に浸透しました。クレジットカードがあまり普及しなかったためにイノベーションが起きた。

入山:アメリカはいまだにクレジットカードが主流ですもんね。

新興国でモビリティーの「カエル跳び」起きるか

安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授

2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。

中島:新興国はこれからマイカーが大衆層に普及していこうというタイミングです。そこに「MaaS」が浸透すると、マイカーを買う文化が醸成される前に、サービスとしてモビリティーを使うようになるかもしれない。

安田:「モノ」をスキップして、いきなり「コト」から入っていくっていうことですね。

入山:経営学ではそれを「リープフロッギング」というんですけれど。カエル跳びですね。新興国の方が既存のものがないから跳び上がって我々の先に行く。それが自動車の世界でもあると。

中島:そういうことが起きる可能性があると思います。

入山:なるほど。自動運転業界の現状が見えてきました。ありがとうございます。この後は、この業界の課題についてお話を伺いたいと思います。

本日の出演者

中島 宏(なかじま・ひろし)
ディー・エヌ・エー常務執行役員

大学卒業後、経営コンサルティング会社へ入社。2004年12月DeNAへ入社。2009年4月より執行役員に就任。新規事業推進室室長、ヒューマンリソース本部本部長、マルチリージョンゲーム事業本部長を歴任後、2015年にオートモーティブ事業本部を設立、本部長に就任。2019年4月から常務執行役員。次世代タクシー配車アプリ「タクベル(現MOV)」、日産自動車との無人運転車両を活用した新しい交通サービス「Easy Ride」、完全自動運転バス「ロボットシャトル」、個人間カーシェア「Anyca」などを手掛ける。


鈴木裕人(すずき・ひろと)
アーサー・ディ・リトル・ジャパンパートナー

アーサー・ディ・リトル・ジャパンにおける自動車・製造業プラクティスのリーダーとして、自動車、産業機械、エレクトロニクス、化学などの製造業企業における事業戦略/技術戦略の策定支援、経営・業務改革の支援を担当。近年は、自動車業界にとどまらず、モビリティー領域に関する事業構想支援、アライアンス支援、技術変化に備えたトランスフォーメーションなどを多く手がける。著書に『フラグメント化する世界-GAFAの先へ-』『モビリティー進化論-自動運転と交通サービス、変えるのは誰か-』(いずれも日経BP)。


入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール教授

1996年慶応義塾大学経済学部卒業。98年同大学院修了。2008年米ピッツバーグ大経営大学院で博士号取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授などを経て2019年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)などがある。


安田洋祐(やすだ・ようすけ)
大阪大学経済学部准教授

2002年東京大学経済学部卒業。2007年米プリンストン大学で経済学博士号取得。政策研究大学院大学助教授を経て2014年4月から現職。専門はゲーム理論。共著書に『経済学で出る数学:高校数学からきちんと攻める』(日本評論社)、『日本の難題をかたづけよう』(光文社新書)、編著書に『学校選択制のデザイン ゲーム理論アプローチ』(NTT出版)などがある。

■変更履歴
記事掲載当初、3ページと4ページの中島氏の発言が、一部鈴木氏と表記されておりましたので訂正します。本文は修正済みです [2019/05/17 16:17]