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議論は白熱

移動のサービス化は力強いトレンド

安田:自動車業界では今、「MaaS」というコンセプトが提唱されていますね。「モビリティー・アズ・ア・サービス(Mobility as a Service)」の略ですが、鈴木さんか中島さん、このキーワードについても解説をしていただけますか。

中島:細かくいうと、「MaaS」には今、3つの意味があります。第1はクルマを含むモビリティーをサービス化すること。DeNAさんが手掛けているようなカーシェアリング、配車アプリなどが代表的なものですね。

入山:それ、我々が漠然と考えていた「MaaS」です。

中島:第2に、複数の交通サービスを組み合わせる「マルチモーダル」という意味でも使われています。たとえば、電車とカーシェアリング、バス、タクシーなど複数の交通手段を組み合わせて、快適なユーザーエクスペリエンスを提供しようということです。日本には「乗換案内」というアプリがありますが、さらに進んで、そのまま予約や決済まで統合しようという動きが出ています。

安田:今、スマートフォンで「Google マップ」を立ち上げて目的地を設定すると、複数の交通手段を使った経路がいくつか出てきますね。将来はそのまま予約ができたり、お金を払ったりもできると。

中島:おっしゃる通りです。「Google マップ」は第1段階。ヨーロッパで最近出てきたのは、そこで予約をして決済までできるという第2段階のものです。さらに、サブスクリプションの形で、月額固定で乗り放題のサービスなども出てきています。最近はこちらの意味で「MaaS」という言葉を使うことが一般的になってきていますね。

 第3は「ビヨンドMaaS」ともいわれ始めていますが、交通と生活サービスとか、交通と不動産などを統合していくというもの。1960年代のモータリゼーションみたいな動きです。

 この3つの意味で分けて考えると、第1のサービス化としての「MaaS」は当然、これから起きてくると考えられています。力強いトレンドになっています。一方、第2の複数の交通手段を統合する意味での「MaaS」はちょっと怪しい。ものすごく注目され、もてはやされたヨーロッパの「MaaS」のスタートアップもユーザーが定着しなかったり、事業者があまり乗ってこなかったりとうまくいっていません。「1つのアプリで全部できる」ことにそんなに価値はないんじゃないかといわれ始めているというのが業界の最新の状況ですね。第3の「ビヨンドMaaS」といわれるものについては、可能性は十分あるんじゃないかとみられています。